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企業×在校生 対談プロジェクト

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学生
  • 1年 プログラマー専攻 福田さん
  • 1年 ゲームプログラマー専攻 岩崎さん
  • 1年 ゲームプログラマー専攻 藤原さん
  • 1年 ゲーム企画・シナリオ専攻 仲村さん
  • 1年 クリエイティブデザイン専攻 粕谷さん
  • 1年 3DCG専攻 中村さん
  • 2年 スーパーITエンジニア専攻 井上さん
  • 2年 スーパーITエンジニア専攻 中村さん

特別講師

  • エンタープライズ
    マーケティング部
    部長
    林 憲一
    1991年東京大学工学部卒。富士通、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフトを経て、2010年にエヌビディアに入社。現在、エンタープライズマーケティングを統括。

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NVIDIA(エヌビディア合同会社)×TECH.C.NVIDIA(エヌビディア合同会社)×TECH.C

TECH.C.の強みは多様性国際色豊かな学生が
集まるのがすごく良い

ビジュアル・コンピューティングテクノロジの世界的リーダー企業、NVIDIA。デスクトップPC、ワークステーション、ゲームコンソール等においてインタラクティブなグラフィックスを作り出すGPUを次々開発。NVIDIA社の研究は、人工知能や自律走行車といった、かっては夢の発明品だったものを製品化する原動力。林氏に、AIの未来や将来像などを伺いました。

Contents

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5年後は、すべてのソフトに
AI が組み込まれているかもしれませんよ。

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学生 御社の理念(会社設立コンセプト)、モットーは何ですか?

NVIDIAという会社が設立されたのが今から23年前。NVIDIAという言葉はラテン語に由来し、「無限を見る」と言う意味です。NVIDIAのロゴマークは目玉で、無限を見る、見えないものを見る、そういう意味をデザイン化したものです。我々のテクノロジーを通じて今まで見えなかったものを見えるようにしよう、それがNVIDIAの創業のコンセプトです。

学生 私達はつい先日、アメリカのサンフランシスコ本社に訪問させて頂きました。そこで、サンフランシスコ本社と日本本社での仕事内容や研究内容の違いを教えてください。

サンフランシスコベイエリア、シリコンバレーですけれど、サンタクララというところに本社を置かせてもらっているわけですけれど、アメリカは本社、ヘッドクォーターです。製品の開発拠点で研究拠点で、また営業、マーケティングの本部。日本は営業拠点であって、本社で開発した製品を日本のお客様に売っていく、そういった販売拠点が日本法人ですね。日本では基本的に研究等はしていません。本社で開発したものを我々は販売しているだけです。

学生 スポンサー契約の種類やジャンルについて教えてください。

eスポーツ(※)のスポンサーは各国でやっています。日本だとデトネーションさん(※)のスポンサーをしています。私たちは最先端のもの、特にハイエンドのところのものを狙って作っています。広く一般にみんなが使う製品はあまり作っていません。ハイエンドのトップレベルのものを作ってそういった製品を売っていこうというのがNVIDIAの考え方なので、それに合うような、デトネーションさんのような最先端なチームを応援しています。スポンサーをして、今はユニフォームにロゴが入ったりしていますけれども、費用を出すとか、それはいろんなパターンがありますね。

※ 「DetonatioN FocusMe」(デトネーション) :世界大会出場経験のある国内トップレベルの『プロeスポーツ』チーム

※ eスポーツ(e-sports):「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略でコンピューターゲームやビデオゲームで行われる競技のこと

学生 先ほどお話していた、デトネーションさんの話なんですけど、個人的にそのゲームが好きで、今年は王者に輝けなかったんですけど、去年より言い方は悪いんですけど、見劣りしていたところがあったんですけれど、今年、スポンサーを変えるとか、そういうことは、あったりするんですか。

それはないですよ(笑)。今年も契約は更新したので。ゲームっていうのは我々のテクノロジーのイメージをちゃんと伝えられる人がいるっていうのと、プロフェッショナルとして彼らがプロとして我々の製品を宣伝してくれたりとか、そういった彼らの姿勢といったものがいいと思っているので、ただ、ゲーム強いからスポンサーしてる、ってわけではありません。プロとしてスポンサーしている会社の製品をうまく宣伝してくれたり、ブログに書いてくれたり、YouTubeで発信してくれたりとか、というものを含めてのスポンサーなので、プロとしての全体の。

学生 御社が考える将来のIT・ロボット業界のビジョンは何ですか?

NVIDIAを創業したとき時というのは、GPUという半導体の会社だったんです。GPUカンパニー。それが今から10年前にGPUを使ってグラフィック、絵を描くんじゃなくて計算する“GPUコンピューティングカンパニー”に変わったんですね。さらにいまは“AIコンピューティングカンパニー”に変わりました。では、これからはどうなっていくのか。先日CEOは「5年後NVIDIAは“コンピューティングカンパニー”になっている」と言っていました。なぜ“AI(Artificial Intelligence 人工知能)”が抜けるのか。それは、これからはすべてのもの、すべてのソフトにAIが組み込まれるだろうと。なので、あえてAIと言わなくともよいのだ、ということでした。そのAIを実現する基盤、そのAIに必要な計算をする基盤になるのがコンピューティングカンパニーとしてのNVIDIAなのだと。ロボットについては先日発表した、ファナックさんとの提携があります。今、ロボットができることはすごく限られていている。製造業のラインでロボットが稼働していますが、ロボットができる作業は実は限られているんです。例えば豆腐を取るなどは難しいんですね。硬いものを動かすのはいいんですけどね。また、ロボットにとっては、最初にこれを取って、次にこれを取って、さらにこれを、といった命令は難しいんです。同じものを繰り返すことはいけるんですけど。これを握って、次にこれを握って、そこで形が違ったりするともうできない。それらの動きを可能にするのがAIのロボットで、それをやろうとしているのがファナックさんで、我々もそのビジョンに乗って一緒にやろうということになったわけです。彼らのビジョンはすべてのロボットがAIで制御されて、ロボットがロボットを作るというもの。そういうのが数年後にできてくると思います。そこから先のもっと未来については、今は想像がつかないですね。

学生 GPUのゲーム、アーキテクチャ、AIなどを含めた全てにおいて、これからの可能性・課題について教えてください。

ゲーム、スーパーコンピューティング、AIいずれも、必要なリソースが足りていないですよね。ゲームなら、もっとキレイな絵を表示させるとか、もっと高解像度でフレームレートを出すとか、より高度なことが求められるし、人工知能の計算はもっともっと必要です。一方で問題になっているのは電力。スーパーコンピュータを使う時に必要な電力がどんどん肥大化しており、神戸にある「京コンピュータ」(世界最高水準のスーパーコンピュータ)なんかは10メガワットくらい使うんです。これは何千世帯分もの電力に相当します。仮に100万ワットくらい必要だということになると、原子力発電所1基くらいの電力がないとスーパーコンピュータは動かない!ってことに…。なので、消費電力を変えずに性能を上げていくということが、いま最も求められていることです。

学生 これからの時代、どのようなエンジニアが必要になりますか。

これからAIで変化がもっと激しくなると思うんですよね。どんどんどんどん新しいテクノロジーが出てくると思うので、変化に柔軟に対応できるような人でないと、そもそも職業がどんどんなくなっていく、変わっていく可能性があるので、私はこれだけしかできませんって人はなかなか難しいですよね。いろんな柔軟性を持ったチャレンジできる人でないと難しいかなという気がしますね。

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いろんな国籍とか人種とか、
違う種類の人が集まるのがすごく大事。

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学生 御社から見て、TECH.C.の強みは何だとお思いになりますか?

いろんな分野の勉強をしている人、いろんなエキスパートの人たちが集まる学校です。いろんな国籍とか人種とか、違う種類の人が集まるのがすごく大事で、そういう人たちがそれぞれ切磋琢磨して何か違う分野のことを協働したりする点が素晴らしい。我々なんか良い例で、ゲーム(事業)で培ってきたことが実はディープラーニング(※)でいっしょだった!みたいなことが起きるわけです。昔から、たまたま飛行機で隣り合わせた生物学者と社会学者がしゃべったら思いもよらないアイデアが閃いたとか、そういうことはあるわけで。それぞれの専門を勉強している人が集まっているという多様性がある、尚かつレベルが高く多様性がある、ということが非常に重要であると思っています。

※ディープランニング(Deep Learning、深層学習):システムがデータの特徴をより深いレベルで学習し、非常に高い精度で事象の認識や分類を行う「機械学習」の手法。他の機械学習技術では達成できないレベルの精度を実現できるため、「人工知能の革命」とも言われています。

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VR,AR,AIによって世界は想像つかないほどドラステックに変わっていくんじゃないかと思っています。

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学生 NVIDIAにとって、AIとVRはどちらが重要な要素になっているのでしょうか。以前、お台場であったGPU テクノロジーカンファレンス、その時に見たカンファレンスでは大分AIの方が重点をおいているように思えたんですが。

はい、NVIDIAもどんどん大きくなってきていて、ビジネスとしてはもちろんゲーム、GeForceのゲームっていうのがあったり、コンピュータグラフィックスでレンダリングしたりっていうようなビジネスがあったり、ディープランニング(※)であったり、たくさんあります。そんな状況の中でCEOが来て、約100分間しゃべったわけです。重要な事柄はたくさんありますが、100分という限られた中で、どれをしゃべるという中で今回はAI、人工知能にフォーカスしてしゃべったというだけのことです。NVIDIAがやってること、重要だと思うこと全部だと、たくさんある過ぎるので今回はAIに絞ったという。どちらも今後の世界を変えていく重要なテクノロジーだし、まだまだチャレンジしていくことはたくさんあるので、どちらが重要なんかは言いにくいですけれど、より大きく世の中を変えていくという意味ではAI、AIコンピューティングカンパニーということを標榜しているのでAIっていうのが、どちらかというとAIかも知れないですけど、どちらも技術的なチャレンジの壁は非常に高いので、これは我々がやるべきどちらも仕事だと思います。

学生 VR,AR,AIによって世界はどのように変わると思いますか?

これはものすごく、ものすごく変わるだろうと。ARはわかんないですけど、VR、ARもいっしょにスタートして、世の中の見方、人の考え方、感じ方は変わっていく。人のインターフェイス、パーセプション、認識っていうのは変わっていくし、AIっていうのは考えが変わっていくし、世の中たぶん、想像つかないほどドラステックに変わっていくんじゃないかと思ってます。それはあとでいろんな質問があると思うし、なかなか今、想像するのが難しいくらいあるんじゃないかなと。

学生 今まで3D映画やPS VRが出ていますが、今開発中の新しい技術製品はありますか?

開発中の製品についてはまだ申し上げることは、非常にエキサイティングなものは控えてますけども、それはお楽しみということで。私の口から申し上げるわけにはいかないです。

学生 私が思うにアメリカの方が日本の一個上をいってると思うので聞きたいのですけれど、アメリカに技術的に追いつく可能性はありますか。

こういう考えはよく言われることですけれど、あらゆる面でアメリカが勝っているということはなくて、製造の技術、同じ車を作るといっても、日本の車の品質がいいとか、いろんなレベルがあるんですね。アメリカが全部よくて日本がちょっと全部劣るということはなくて、日本がいい部分があったりアメリカがいい部分があったりがあるので、よく、日本で陥りがちなのが「all Japanで日本人だけで日本の製品だけで作ろう」みたいな。そんな風になっていくと恐らく劣るものになる可能性が高くて、世界はどんどんグローバル化しているので世界中のいいものを合わせていくっていう考えにしないと日本がどうだアメリカがどうだという風にしてしまうと、なかなか難しいところがあるかなって気がします。

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VRの発展には、GPUの進化が欠かせません。

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学生 VRの今後について、新しい技術がまた生まれるのか、またはVRを軸とした事業となるのか、今後について意見をお聞かせください。

VRはですね、まだ本当に始まったばかりで、VRで動きを出すにしろ、眼鏡をかけてみた時にすごい感動はするんですけど、実際にはケーブルでがんじがらめになっているわけですよね。あれだと、まだまだ本当のVRにはならないですよね。メガネをかけながら後ろでケーブルを持って歩くような人がいる今のVRのテクノロジーのままではなかなか大きな飛躍はできないので、もっとそれが簡易的にできるようになるとか、今でもこうVRのグラスをかけて頭を動かしたときに、それに追随するように絵を描くのは非常にたいへんで、ハイエンドの我々でいうところのタイタンエックス(NVIDIA TITAN X 。NVIDIA Pascalアーキテクチャを採用した究極のグラフィックスカード)の何枚挿しかしないと、間に合わないくらいの描画速度なんですよね。なのでもっともっGPUなりが進歩しないと、もっといろんな人が楽しむって風にはならないので。まだまだVRっていうのは新しい展開があるだろうし、今のままではそんなに大きく広がらないだろうなっていう風には思っています。

学生 次のGPUの性能は今最新のものの何倍ほどの性能になる (目指している)と思いますか?

我々、GPUのアーキテクチャの名前はずっと発表していて最近はずっと物理学者の名前でテスラ、その後フェルミ、次にケプラ、マクセル、パスカルってところにきて、次はボルタっていう。来年にはボルタっていう出てくる予定で、今のパスカルに対して消費電力あたりで2倍くらいの性能を目指しています。そっから先はまだ発表していないので、お知らせはできないんですけど、今、半導体の世界だとムーアの法則というのがあってCPU、半導体に入れられるトランジスタの数が2年で倍になるという規則があって、この50~60年、なってきたんですけれど、CPUの方は頭打ちになっているんです。GPUの方はその規則が成り立ちそうなので、もうしばらくは倍々になるかな。

学生 現在、何ヶ国くらいで事業を展開しているのか、その規模がこれからどのくらい変わっていくのか、どういう風に変わっていくのかを教えてください。

何ヶ国で展開しているんですかね。ちょっとわからないです。主要な国ではビジネスはしていますね。今後どうなっていくかっていうのは、正直どうなるかわかんないですね。私が入社したのが6年前なんですよ。たった6年前なのに、今とやってるビジネスがかなり違うんですね。ものすごく変化していく会社。私が入社したころは、ビジネスの4分の1くらいが、パソコンのマザーボードのビジネスをやっていました。それが今、完全になくなっていて、その後もスマートフォンとかにテグラを入れるってことをやっていたんですけど、今、スーパーコンピュータやったり、ディーププランニングをやったり、自動車やったりという、どんどんビジネスが結構なスピードで変わってきています。そんな会社なので、今後どうなっていくかわからないですけれど、大きくなれば面白いと思いますし、注力していく分野が変わっていくんですね。なので予想はつかないです。悪くはならないとは思っているんですけれど。変化をしていくと。

学生 VRは触覚や嗅覚など、五感を使って体験できてこそ真のVR技術だと思います。どのような技術開発まで可能と考えていますか?

我々、VRでも主にグラフィックスの部分をやっているので、その部分を我々が開発するところではないかもしれないですけど、我々としてはVRを開発するためのSDK、VRワークスっていうのを提供して、いろんな人が簡単にVRに対処できるようにしようとはしてます。

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今、人工知能やディープランニングで一番よく使われているのが画像処理。

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学生 AIの自動運転の映像を拝見させて頂きました。しかしAIがどこまでも素直に忠実に教えられたことを忠実に反映するとは言っても、多くのことを覚えると予定とは全く異なる解釈をするケースも出てくると思います。そのような場合、修正方法を教えてください。また、自動運転以外で既に実用化が見えているAIの使用用途があれば教えてください。

AIって定義もいろいろあるんですけど、教えたことをそのままやるっていうわけではないですね。今年の3月くらいだったと思うんですけど、人工知能対碁のチャンピオンが戦ったときに、最初解説者の人は「コンピュータが変な手を打ちました。コンピュータはまだまだですね」みたいなことを言っていたんですね。いわゆる定石ではない手を打ったわけです。でもだんだん後の局面になると、あれが効いていたってことが判明してきて。コンピュータが、今までの定石ではない手を打ってきた。人間が考えつかなかった手を打ってきたわけです。それが実はいい手だったということがわかったという。自動運転も今後、もうそろそろ始まるんですけれど、ロボレースっていう自動運転車のレースがもうすぐ始まるんですね。フォーミュラーカーの形をしていて、ホントにフォーミュラーカーの大きさで人間が乗ってないクルマが20台走るってレースがもうすぐ始まるんですけど、自動車のレースだとラインどりで曲がるときにアウト・イン・アウトみたいなコースどりをするのが速いと思い込んでますけれど、もしかしたらAIの車は違う答えを出すかもしれません。なぜなら人間のレーサーは何十周程度しか練習できないわけですが、コンピュータは何百万周でも何億周でもシミュレーションしてからサーキットに行くわけですから。もしかして人間が思ってたのと違うラインどりでもっと速いパスを見つけてくれるかも知れません。それって悪いことではないですよね。AIっていうのはあるスコアを高くするように考えさせるようになっているので、悪い答えは採用されません。もしそれが人間が想像していたのと違う結果であっても、いいスコアを出すものであれば採用されます。間違って悪いものであれば採用されない。人間が思ったのと違う、もっといい答えを出す可能性はあります。悪い時は採用されないので特に問題はないだろうと。今人工知能ってまだまだ自動運転はこれからの話ですけれど、今人工知能とかディープランニングで一番よく使われているのが画像処理ですね。画像処理とか音声処理で、例えばこれは書けるかわからないですけれど、アップルのiphoneで「ヘイ、Siri(シリ)」って言った時にしゃべりかけた言葉が活字になるんですけど、あれはAIですね。ディープランニング。グーグルだと「OKグーグル」って話しかけた時にしゃべった言葉が活字になるんですけど。これはここ数年で飛躍的に高まったこと。若い人は知らないでしょうど、5年前の音声認識なんてコンピュータで話しかけた活字変換って、ほとんど間違ってたんです。だけど今、ほとんど間違わないです。あれはAIなんです。それが今一番たくさん使われているし、みなさんもフェイスブックとかやってるかもしれないですけど、フェイスブックに写真を上げる時に顔がパンパンと出てくるのはディープランニングでやっています。たぶん今、ディープランニングがない状態で暮らしてる人っていないと思うんです。もう、実際にかなり使われているんですよね。あとはアマゾンとかで買い物すると、なんかこれいいですよ!ってオススメしてくれる。これもAIがやっているので。みなさん、知らず知らずのうちに、かなりAIに触れているんですよ。

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我々の製品の「テグラ」という製品はCPUとGPUが混ざっています。

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学生 CPUとGPUがどちらも搭載されているPCは全然珍しくなくなってきましたが、複雑な問題ほどGPUの方がCPUの方より早く解決できると本社のほうで伺いました。そういわれてしまうと、その時、CPUの必要性について疑問をもったんで、それについて教えてもらいたいです。またその中にCPUが必要だとした場合ですけど、CPUとGPUと分けて搭載するとかじゃなくて、CPUとGPUをひとつにまとめたユニットなどはできないのでしょうか。

CPUとGPUというのは本質的に違います。CPUというのはひとつの仕事をできるだけ早くする、シングル・スレッドを最高に早くするということを目指して作られたものです。一回、走り出したジョブが止まらないようにいろんなキャッシュのアーキテクチャなどが作られていて、例えると東京マラソンをやる時にマラソンランナーが新宿から走って来ますよね。そのマラソンランナーが走り続けられるように、いろんなところで水配る人とか、バナナ配る人がとか、そういうリソースがあって、それでランナーが走る続けるっていうのがCPUの考え方、ひとつのスレッドをなるべく速く動かすっていうのがCPUです。「逐次処理」っていうんですけど。一方、GPUっていうのは並列処理を目指すもの。ひとつひとつのジョブは小さいんですけど並列にやるっていうのがGPUなので(CPUとはまったく)違うものなんですね。CPUが最初に仕事始めないとGPU動かないんです。GPUは段取りをしてくれて、ここから先は並列にできますというところでバンと動くので、終わった結果、またCPUが処理してって最後終わるっていう形なのでGPUがあれば全部できるってならないんですよ。だからどちらも重要。導入しても並列にできないって部分はあるので、そこはCPUが速くがんばらないといけなくて、並列でできるところはGPUがやるっていう。両方必要、長所短所があるんです。まとめるってこともできます。まとめるってこともできて、インテルも今出してるCPUはGPUの部分が入っているのもありますし、我々の製品の「テグラ」っていう製品はCPUとGPUが混ざっています。ただそれは、全部そういう風にできるのかっていうと、それは対象によります。半導体のテクノロジーとしてひとつの半導体に詰め込めるトランジスタの数は決まっているので、その中のどれくらいをCPUに使って、どれくらいGPUに使うのかはっていうのはバランス次第。今我々が作っているようなハイエンドのグラフィックスが必要なものはCPUにしてしまうわけにはいかなくて全部の使える限りのトランジスタをGPUに割り振っているので、CPUとGPUの二つが必要になります。スマホとかに入っている小さなものとかはCPUとGPUが一体になっている。それはターゲットによって一つにすることはできますけれど、機能としてはCPUという逐次処理をやるための部分とGPUと並列処理やるというのは別々の回路になります。一緒にするっていうことはたぶんできないと思います。

学生 アーキテクチャがマックスウェルからパスカルになったことで飛躍的に性能が上昇しましたよね。なぜあれほどまで大きな性能アップが出来たのですか。プロセスルールを微細化したことが大きな要因でしたか?

半導体の性能を上げる要因は二つあります。一つはプロセスルールですね。ケプラー世代、マクセル世代は28ナノというテクノロジーを使っていました。今のパスカルは16ナノ、世代二つくらい飛ばしたんです。それによる微細化(スケーリング)で性能が向上しました。これが一つ大きな要因ではあります。もう一つはアーキテクチャの変更です。ケプラー、マクセル、パスカルとアーキテクチャの工夫による進歩とういのがあってのことです。ケプラーからマクセルはプロセスを変えずに、アーキテクチャだけで2倍くらい速くなっているんですよね。今回は更に半導体テクノロジーもアップして、アーキテクチャもアップしたので、ものすごく性能がアップしたんです。両輪でアーキテクチャの改善、半導体のプロセスの両方で性能がどんどん上がっていったと言えます。

学生 ディープランニングする上で、CPUで計算するより、GPUで計算する方が飛躍的に多くのことがこなせるじゃないですか、それはなぜですか。

ディープランニングの計算というのは、行列演算になります。数学的には。大量の行列演算をするっていうのがディープランニングの基本的な計算パターンになります。それを更に並列に大量に行列演算が出てくるんですね、ディープランニングの計算というのは。その行列の計算を数学で習った行列そのものなんですけれど、その掛け算、足し算を大量にしなければいけないのがディープランニングで、その計算処理というのが、実は、GPUが絵を描く時にやっている計算とまったく同じなんです。GPUは絵を描くために座標の計算とか、物体が裏に隠れている陰線処理とか、いろんなこと計算するんですけど、行列の計算ですね。それがすべての場所において行われるんですけど、それを並列に行うっていうのがGPUで、その計算パターンとディープランニングでやる計算パターンはほぼ同じなんですよ。なので、今ディープランニングで何か計算をさせようとするとGPUが一番いいんですね。先ほど申し上げたようにCPUは逐次処理なので並列にするのがそもそも苦手なので大量の並列の行列計算ということになるとGPUが圧倒的に有利です。

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学生時代、もっと英語を勉強しとけばよかった(笑)

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学生 学生の間にしておけばよかったと思うことは何ですか?(現在学生の私たちに対して、"是非やっておいては"と思うこと)

社会人になる前の出来事は忘れてしまいました(笑)。大学を出てもう25年くらい経ちます。まあ、ちゃんと勉強しとけばよかったなとは思いますね(笑)。あとは、この会社もアメリカの会社でグローバルな会社ですけれど、いろんな国の人と話す、いろんな人種、今、このオフィスも、日本人だけじゃないですのでいろんな国籍の人がいて、会社のシステムは全部英語なので、もっと英語を勉強しとけばよかったなとか、いろんな国の人と遊んだりしたりした方がよかったかなと。

学生 先日のGTC 2016のイベントに参加しました。私はネットワークエンジニアを目指していますが、どのような資格をとればいいですか?これからの時代はどのようなエンジニアが必要になりますか?

なんでしょうね。私は資格というのを一つも持っていないので、車の免許くらいしか持っていないので(苦笑)。私は大学、コンピュータアーキテクチャを勉強していました。コンピュータアーキテクチャというのは計算量の理論とか、コンピュータがなんで動くのか、理論的なことを考えて勉強していたのです。基礎というか、なんでコンピュータはそもそもなんで動くのかとか、そういうことがわかっていれば時代はどんどん変わっていくので、通信方式もどんどん変わっていくでしょうし、その都度、新しいことは覚えていかないといけないですけれども、基本となる、なんでそもそもコンピュータは動くのか計算できるのかとか、計算量の理論とか、そういう基本的なことがわかっていれば変化に対応できるんじゃないかって気はします。きっと今使っているコンピュータと10年後はまったくコンピュータは変わっているはずなので、ただ、理論は同じはずなので。そこを踏まえた上でいろんな新しい知識を勉強することが大事かなという気がします。

学生 NVIDIAでインターシップをしたい場合、必要な資格とか、これをもってないといけないとか、どのような人だったら参加できますか。

インターシップは日本ではやっていなくて、本社で学生さんがインターシップをやっていますけど、基本、開発の方を、特に最近だとスーパーコンピューティングだったりデータサイエンティストのようなビックデータ・アナリシスだったり、ディープランニングだったりというところがあるので、そういう研究をしている人が多いかなと。資格で言うとそういう分野の人が多いかなと。

学生 GPUを購入する際、社員割引はありますか?

ありますが、全部の製品が対象ではないですね。GeForceのいくつかとか、SHIELDなどは買えますね。そこそこの安さで。

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社会の変化に対応できる人じゃないと生き残れないと思います。

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学生 どのような技術、スキルを持った人がNVIDIAに必要だと思いますか?

世の中の変化も激しいけれど、NVIDIAの変化も激しいんです。ですので、変化に対応できる人じゃないとだめかと思います。あとは、すぐやる人。この間CEOが来た時に「明日死ぬ、そう思ってやれ」みたいな事いわれて、明日死ぬなら俺は働かねーよなって思ったんですけど(笑)。それくらいの危機感というか、今日やらないと明日はライバルにやられてしまうという危機感を持ってすぐにやる、前にやったことがなんであれ、それに向かって突き進むような、そういうフレキシビリティとガッツというか、そういう人かな。

学生 仕事をしていく中で、最も仕事が忙しくなったり、大変だと思う過程はどのような部分ですか?

私はマーケティングという仕事をしているので、何が一番忙しいかというと、新しい製品が出る時ですよね。世の中には内緒で準備をしていて、新製品が出るとなると、プレスカンファレンスの準備をしたり、製品のウェブサイトの準備をしたり、カタログを準備したり、いろんなものを全部準備して、この日の何時何分に解禁となるので、その時が一番大変ですよね。特に最近は、広告だったり、ソーシャルメディアだったり、口コミだったり、マーケティングの手段はどんどん変わっているので、そういった新しい手段に対応した準備が大変です。また、本社から来る資料は全部英語なので、全部日本語に翻訳して、間に合わせるっていう点も大変ですね。

学生 1チームの人数や作業分担について教えてください。

これもいろいろですけど、私はマーケティングで、特にエンタープライズのマーケティングをしていて、今は5~6人ですかね。私はマネージャーをやっています。この間のGTCでは企画も全部私がやったんですけど、そういったものとか、ディープランニングの担当者だとか、あと、Quadroの担当者とか、あと、eスポーツの担当者だとか、あとはVRの担当者だとか。

学生 ディープラーニング勉強会に参加する費用は非常に高いと思います。学生向けに無料勉強会もありますか?

今、我々がやろうとしているディープラーニングのインスティチュート(制度)があって、基本的には有料にしているんですけど。今アメリカで自動運転のためのコースがあって、120万円だったかな。ただ、その120万円で授業を受けた人が、半年以内に就職できなかったら全額返します、みたいなことをやろうとしています。そこで学んだ人は必ず採用されるはずなので。今ディープラーニングの技術を身につけた人は必ずどこかで高い給料で採用されるでしょう。ディープラーニングの勉強に投資をしたら、きっと高い給料で雇われるので、いまは(120万円という費用を)高いと感じるかもしれないですけど、費用対効果は高いと思います。その中で、学生さん向けは無料にしたり、安くしたりしようとはしています。

学生 技術的特異点(※)についてどのように思いますか?

シンギュラリティ、人類の英知の集合知よりもAIが超えるかという問題ですね。ということで言えば、きっと超える日がくるだろうなって気は私はします。それが2045年かどうかはわからないですけど。もっと早いのか、遅いのか。いずれにしろ、コンピュータの性能が上がっていく今のケースを考えると近いうちのそういうことが起きるのではないかなとは思いますね。ただ。一方、さっき申し上げたように電力がものすごく厳しくなってくるので、電力的に足りないっていう可能性もないではないかな、って気はします。電力(問題)の壁。でも、何かしらの知恵でブレークスルーしてクリアして、きっとシンギュラリティは迎えるのではないかな。これは私の個人的な見解ですけど。

※ 技術的特異点:人工知能の開発が一定の度合いを超えるとテクノロジーが人間の制御を凌駕し、人間の生活を恐ろしいまでに変容させてしまうと言われていること。また、その転換期のこと。「シンギュラリティ(技術的特異点)」や「2045年問題」と呼ばれている。

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自動運転。2020年までにできることが相当増えますよ。

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学生 2020年に向けてどんなことをしていますか?

2020年というのは世界中、いろんな区切りですよね。特に日本ではオリンピックがあるので、この年をいろんなもののゴールに設定されていることが多いです。政府は羽田空港からオリンピックスタジアムまでの自動運転をやろうとしています。自動運転に関してはかなり2020年までにできることが増えるかなって気はしています。また今、我々も、そのVRの技術というのをこのオリンピックに向けて取り組もうとしているところで、オリンピックスタジアムまだ作ってないのか、作り始めたのか、あれができる前にVRで見えるようにすることだったり、競技をテレビで今、大画面で家で観ていますがVRで観るとか。本当にスタジアムに入り込むような新しいテクノロジーもきっとあるだろうし、2020年は4年後なので、逆算して今できることは何かという検証をやっていて、その中でも特に自動運転というのが大きなゴールですね。おそらくは高速道路は自動運転の車が結構走ってるんじゃないかなとは思っています。

学生 現在、私たちはVRを防災に活かす企業プロジェクトをおこなっています。これからTECH.C.の学生である私たちと是非取り組んでみたいと考えて頂けるプロジェクト等がありましたら、是非お聞かせください。防災に限ったことではなく、VR関連のことでシミュレーションをしてみたいとかありましたら。

我々が取り組んでいるVRは大きく二つあります。ひとつは、コンシューマ系ゲームのような遊ぶ系のVRと、もう一つはプロフェッショナル用のVRです。今年の4月、GTC(GPU Technology Conference)で我々が発表したのは、今までにないフォトリアルなVR体験を可能にする画期的なレンダリングエンジン『Iray VR』。光と物質の物体的な挙動を物理的にシミュレーションすることにより、ほぼ現実に近いフォトリアルな描画を可能とするものです。例えばゲームでは、そういう火の描写って物理現象ではないんですよ。火が燃えてるっぽい、いかにもっていうので表現しているだけで物理じゃない。でも、防災だと火の燃え方の物理シミュレーションをして見ないと本当にどこが燃え移るなどが把握できない。そういう物理シミュレーションを含めたVRという点では我々の目指すプロフェッショナルVRと一致するところです。今は、物理計算をしながら、画像を描きながらっていうのが、なかなか難しい。顔が動かせないなどの問題が出てきてします。しかし、近い将来、GPUのパワーを使って、物理現象も再現しながらのVRというものが実現できれば防災にも使えるのかなっていう気もします。

学生 最後に、これからロボット業界・IT業界を目指す人たちへのエールをお願いします。

ロボット業界・IT業界は非常にエキサイティングであることは疑いがないですね。絶対これからものすごくエキサイティングに発展していくでしょう。これからは若い人たちの時代です。みなさんが最新のAIの人工知能などを勉強して、そういう業界に入っていけば、真っ先に最先端のことが経験できます。今までできなかったことがどんどんできるようになることは明らかです。非常に未開の荒野が広がっていて、これからは楽しいことしかないような気がします。しっかり勉強して基礎をおさえていればロボットとかAI、ITはここから5年10年は絶対確実に楽しいので勉強してがんばっていただきたいと思います。

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