コース紹介
「夢中」になれる仕事、きっと見つかる!TECH.C.だから様々な「職種」と「業界」が目指せる!
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大切なのは情熱とこだわりと愛
夢を叶えたいなら貪欲に取り組んで!
「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」シリーズを世に送り出し、人々を魅了し続ける株式会社スクウェア・エニックス。今回話を伺ったのは、「ドラゴンクエストX」の制作に携わっているクリエイター3名。プログラマー、プランナー、デザイナー、それぞれの立場から、オンラインゲームならではの開発秘話や制作におけるこだわりについて語っていただきました。
学生 どのような仕事をしているか教えてください。
田中 私は「ドラゴンクエストX」チームのゲームプランナーで、主にイベント周りを担当しています。シナリオチームから上がった「ドラゴンクエスト」のメインストーリーを、実際にゲームとして作る仕事です。そのほか小さなクエストであれば、シナリオチーフ監修のもとで物語を書いて組み込むこともあります。
青山 私はプログラマー全体の責任者のテクニカルディレクターです。プログラムは書かず、リーダーとしてプログラマーを適材適所に配置したり、スケジュールを管理したりしています。「ドラゴンクエストX」は「MMORPG」というジャンルのオンラインゲームなのでサーバーを使います。そのためサーバー担当者やネットワークを準備する人などと調整する仕事が多いです。
川原 仕事としてはPC(プレイヤーキャラクター)やモンスターの動き・表情などを作る仕事です。私は主にモンスターの動きを担当しています。
学生 「ドラゴンクエストX」制作においてこだわった点はどこですか?
青山 最初に堀井さんと「ドラゴンクエストのMMORPG」をつくるのか、「MMORPGのドラゴンクエスト」をつくるのか、についてはとことん話し合いました。結論として「ドラゴンクエストをつくりましょう」と。何かと聞かれたら、「ドラゴンクエストです」と答えられるものをつくるーーそれがいちばんのこだわりです。また、一般的なMMORPGに比べて「ドラゴンクエストX」は操作がスッキリしています。発表した当初、手抜きだといわれたこともあったのですが、そうではなく、コストをかけてできるだけ情報を表示しないようにしている。これもドラゴンクエストの伝統だと思っているからです。
田中 私のセクションもそれを引き継ぎ、これまで「ドラゴンクエスト」を遊んでいたお客様が違和感なくプレイできるよう、キャラクターの動きやストーリーのつながりに気を遣いました。MMOに対して「敷居が高いな」と感じていた人が実際に遊んでみたときに「あ、いつものドラゴンクエストっぽい」と思えるように意識してつくりました。
川原 MMOなので生活感が出るよう、例えばフィールドでモンスターが寝ていたり、徘徊していたり……といった「ちゃんとモンスターが生存している」と感じてもらえる点にこだわりました。プレイヤーキャラクターはお客様の分身と考え、コミュニケーションがしやすいように、動きの滑らかさに注意しました。
学生 ドラゴンクエストにとって変わらないものは何ですか?
青山 堀井雄二さん(ゲームデザイナー)と鳥山明先生(漫画家)、すぎやまこういち先生(作曲家)の3方はドラゴンクエストには必須の存在です。堀井さんの持つ強いこだわりが「わかりやすさ」。その点を大切に、見てすぐにわかるようとても丁寧につくっています。
田中 イベント周りに関しては、プレイヤーキャラクターに必要以上の演技をさせません。ゲームを遊ぶ人とキャラクターの気持ちが乖離しないためにも、基本的にプレイヤーキャラクターはしゃべらない、そして必要以上の演技をさせないようにしています。そこがドラゴンクエストらしさかなと思います。
川原 デザイナー面でいうと、最初はいろいろと話し合ったのですが、「面白いもの」は受け入れるという堀井さんの考え。伝統や固執にとらわれず変化に柔軟である事。それがいちばんドラゴンクエストとして変わらないものかなと思っています。
学生 「ドラゴンクエストX」でバトルシステムを自由に動けるようにしたのはなぜですか?
田中 複数のプレイヤーがバトルに参加するため、ターン制にしてしまうとプレイを待たされるので、まずターン制をやめた、とバトル担当者に聞いています。MMOは複数の人が遊ぶので、誰かがターンを終わらせるのを待たないと自分の番がきません。他の人が操作するのを「まだかな」と待たせたくないということでやめたそうです。また、実際に自由に動けるようにしたのは、パーティプレイ(協力して行うプレイ)ではそれが自然だったということでした。
青山 一般的なMMORPGの「ヘイトシステム」「ヘイトコントロール」を知っていますか?例えば戦士がモンスターを挑発するなどでヘイト(怒り)をかってそちらに向かせ、魔法使いなどが別の場所から攻撃する形ですね。「ドラゴンクエストX」ではそれをもっと直感的に、例えばモンスターの進路を戦士が前で防いでいる状態で、魔法使いがその後ろから攻撃できる形にしました。そのほうが迫力もあるし、わかりやすいじゃないですか。
学生 ユーザーからの意見で、一番印象に残った意見は?
田中 一番印象に残った意見とは異なるのですが、お客様が自由に意見を書けて、それに対して「いいね」「どちらでもない」「そう思わない」が投票できるアンケートのようなシステムがあるんですね。わりと意見があったので採用したら「今までのほうがよかった」という人が実は結構いたり、逆に不便になったという反応もあった。それ以来、意見がたくさんあるからすぐに受け入れるのではなく、現状をいいと思っている人の存在を忘れないように気をつけています。
川原 「ドラゴンクエストX」のモーションはお客様に高い評価を頂いておりまして、動画サイト等でお客様がまとめてくれていたりするんですよ。「しぐさのこの動きが好きだ」や「攻撃の後に回転する女の子がいいね」など、私達がこだわった部分をお客様が気に入って頂けている事がとても嬉しいです。あと、モンスターで「スライムナイト」というのがいるんですけど、生活感を出す為に乗っているナイトをフィールドで下ろしてみました。今まで下りたところを見た事がなかったので試しに下ろしてみようと思って(笑)開発内では評判は良かったのですがもしかしたらお客様に怒られるかもしれない、果たして受け入れて貰えるかなと不安もありましたが、リリース後にお客様の意見を見てみると好意的に受け止めて下さったので安堵しました。
学生 これまでのゲーム業界で変化してきたこと、また時が経っても変わらないことをそれぞれ教えてください。
青山 プログラマーの立場で見ると、ファミコンの時代から大きく変化したことは2つあります。1つは2Dから3Dへの変化。2Dではジャンプするにしてもその高さを数値でプログラムに全部書いていたのですが、3Dになると数学で計算しないといけない。その段階で脱落するプログラマーもいました。次にネットワーク。ネットワークに対応できないと今は厳しいでしょうね。
田中 昔は作ったゲームをお客様にアナウンスする方法が雑誌の記事や、店頭で実際に触ってもらうなど一方通行だったのですが、最近はネットやSNSが主流。発売後プレイしたブロガーや一般の人が「ここがこうだった」「これの攻略はこうだ」など、遊ぶ側からの発信も増えたので、遊ばれ方も評価のされ方も変わっています。変わらないのは、面白いものは面白い!ということでしょうか。
川原 デザイナー面でもやはり2Dから3Dへの変化は大きかったです。それまでメインだったドット打ちがポリゴンになり、仕事の形態がまったく変わった。私が入社したのがまさにその時期だったので、一度挫折して覚え直しました。 変わらないのは、ドラゴンクエスト発売日の店頭行列ですね。これは今も昔も変わってないですね(笑)。
青山 ドット打ちはすごいですからね。当時は、「ブラウン管でこの場所に白い点と黄色い点を打てばこう滲むから全体としてこんなふうに見える」とか「データでは左に寄っているけどブラウン管で見るとちゃんと真ん中に見える」と計算してやっていたんですよ。このように神がかっていた人たちも、3Dになるとまた別ですからね。
学生 人生で影響を受けたゲームは何ですか?またみなさんにとってゲームとは何ですか?
青山 影響を受けたゲームは「ドラゴンクエストⅢ」。当時、反射神経がよくないとクリアできないものが多かった中、誰でもコツコツやればクリアできるゲームはインパクトが大きかったですね。ゲームとは何か……難しいですが、私にとっては仕事であり生活の一部。ちなみに私の場合、ゲームはプレイするよりも作るほうが楽しいです。
田中 いろんなゲームに影響を受けて今の私があるのですが、好きなゲームは「ゼルダの伝説」シリーズです。自分が剣を持って戦う、盾で防ぐというシンプルなスタイルや世界観が好きで、新しいシリーズでも変わっていないことがスゴイと思います。ゲームとは楽しいこと。「作って楽しい」「遊んで楽しい」。よく仕事と趣味は分けるべきと言われますが、私の場合は趣味で好きなことがゲームで、それが仕事になったのでよく分かりません。私にとってゲームは「ふつうにそこにあるもの」なんです。
川原 「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」など影響を受けたゲームはいくつかありますが、自分の中では「クロノ・トリガー」。当時、別会社だったDQとFFのクリエイターが集まって作ったものなので「こんなことやっていいのか」と衝撃を受けました。
ゲームとは何か、これは娯楽。娯楽なのですが、娯楽以上でも以下でもダメです。
学生 憧れのゲームクリエイターはいますか?
青山 憧れはいないですね。
田中 私も、憧れという意味では、いません。
青山 尊敬する方は堀井雄二さんと、一緒に仕事をした「桃太郎シリーズ」の(作者)さくまあきらさん、「天外魔境シリーズ」の広井王子さん。堀井さんは、休み時間にスマートフォンなどで結構難しいゲームをされているのですが、同じような操作性と難易度の企画を出すと「これじゃ難しすぎるね」と言われるんです(笑)。要は仕事モードになると初心者に戻れる人。「憧れ」ではなく尊敬しています。
川原 私も堀井さんと鳥山先生とすぎやま先生ですが、憧れではなく尊敬。お会いできた時点で尊敬に変わりました。
青山 我々はゲームクリエイターなのでしょうね。憧れている場合じゃない。自分がそうならなくてはいけないからですね。
学生 プログラミング技術の習得法、また学習のコツを教えてください。
青山 コツは「楽しむこと」だと思います。私は中学2年生のときにプログラミングを始めましたが、好きだから続いているだけで、特に意識して勉強したことはほとんどありません。いちばん重要なのは、自分でつくってみることですね。本を読むだけではなくつくったほうがいい。
学生 ゲームプランナーになるために今からやっておくべきことは何ですか?
田中 実は「今からやっておくべきこと」はないんです。やってきたことそのものがどんなプランナーになるかにつながる。例えば、日本史が得意であれば歴史のゲームがつくれるし、数学に強ければモンスターのパラメータ(状態を表す数値)や敵のダメージ計算式ができます。ただ、ゲームは一人ではつくれないので、複数の人とゲームをつくるなどのチームワークは経験になると思います。もしつくりたいゲームや世界観、ジャンルがある場合は、そこを広げて深くできればきっと武器になる。興味のあることや勉強したことによって引き出しを多く持っていれば、実際の現場でも提案できることが増えるので、自分の企画を通しやすくなるし、ゲームもつくりやすくなります。
学生 ゲームクリエイターに求められるものは何だと思いますか?
青山 私は「情熱」だと思います。ゲームをつくりたいというパッションが重要です。
田中 「こだわり」でしょうか。頼まれた仕事であっても、その中にどれだけ自分らしさを出せるかが重要です。それは「ゲームの見た目」の自分らしさかもしれませんし、「ゲームの作り方」の自分らしさかもしれませんが、そこに何らかのこだわりがあるといいのかなと思います。
川原 ゲームクリエイターに求められるものは、やはり「好きである」こと。でも好きだけではダメだとも思っています。ただのファンではなく、その「好き」を実現するための努力をすることやスキルを磨くことが大切です。
学生 これからゲーム業界を目指す学生へエールをお願いします。
川原 学ぶ時間よりも働く時間の方が何倍も長いと思うので、続けられるモチベーションを維持することが大事です。そのためにはゲームについて知って、もっともっと好きになっていけば、いい連鎖が生まれると思うので、いろんなものを知っていくことから始めてください。
田中 就職すると、趣味や勉強する時間がなかなか取れません。学生の間は貪欲にやりたいことや興味のあること、勉強したほうがいいと思うことはやっておいたほうがいい。就職すると「やっておけばよかった」と後悔することもあれば、逆に学生時代に勉強したことが意外な場面で役に立つことがあるので、「無駄な時間はないよ!」とエールを送らせてもらいます。
青山 ゲームの仕事は、生半可な気持ちでは務まりません。専門学校はゲームをつくれる機会があると思うので、どんどんつくってもらいたい。ゲームをつくっていて楽しいと思えるか、仕事として楽しいと本気で思えるかどうかを見つめ直してほしいです。それでも楽しいと思えるのであれば、「好き」を実現する努力を惜しまないで、大変だけど頑張って挑戦してほしいと思います。