コース紹介
「夢中」になれる仕事、きっと見つかる!TECH.C.だから様々な「職種」と「業界」が目指せる!
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ユーザーとして楽しむことを忘れず
新しい「遊び」を生み出していく
コンシューマやオンライン、アーケードに至るまで、あらゆる場を通じて国内外に新しいエンターテイメントを発信し続けているセガゲームス。同社を代表するヒット作『PHANTASY STAR ONLINE 2』(以下『PSO2』)を手がけているプランナー、アートワークデザイナー、プログラマーの3名に、開発の醍醐味や自身のゲームとの向き合い方について聞きました。
学生 どのようなお仕事をされているか教えてください。
王 私はプランナーで、『PSO2』のクエストの企画を担当しています。プレイヤーキャラやエネミー(敵キャラ)が戦う舞台を作ったり、整えたりするのが仕事です。東京のステージに関するクエストや、レイドクエストの「創世を謳う幻創の造神」を担当しました。
鴇田 私はプログラマーです。入社時から『PSO2』に携わり、最初はフィールドにあるオブジェクトやクエストを作っていました。その後エネミー担当になり、今はエピソード5初回配信分の半数ほどを手がけています。
岡崎 アートワークデザイナーといって、ゲームに登場するものをデザインしたり、広告物の絵を描く仕事です。企画者さんからの要望を受け、モデリングやモーションの要件を満たしたうえで、美しいコスチュームや武器、背景、エネミーなどを作り上げていきます。
学生 思い出深い仕事や、やりがいを感じるのはどんなときですか?
鴇田 思い入れがあるのはオメガ・ヒューナルというキャラクターですね。もともといたファルス・ヒューナルが強くなったボスなのですが、同じモーションで同じ攻撃をしているように見えて、実は細かい調整をいろんなところに施しているんです。外見を変えただけではなく、フルスクラッチでいちから全部作り直している。SNSで「すごく楽しかった」と書かれているのを見て、苦労が実を結んでよかったなと思いました。
王 私は「走破演習:東京」というクエストです。アークスフェスティバル2016のARKSエキシビションマッチで声優の市来光弘さんと会一太郎さんがプレイしたとき、自分の意図した細工が効いていいプレイが飛び出したんです。それを見た観客が湧いた瞬間、こだわってよかったと思いました。
岡崎 キャラクターはいつも人気が出ることを目指してデザインしています。それがユーザーに受け入れられ、ファンアートを描いてもらったり、コスプレしてくれたりするとすごく嬉しいですね。
学生 『PSO2』を運営するにあたって、苦労したことはありますか?
鴇田 ハードの性能が異なる複数のプラットフォームでの開発は、どのセクションも苦労しているかと思います。
王 それはありますね。例えばクエストを設計する時、マップの構造、オブジェクトの作成、キャラクターやエネミーの演出などを考えるに当たって、エンジンのリソースを多く必要なものを多数組み合わせる場合、機種によっては注意が必要になります。一連の流れが完成して「いいものができたな」と思っても、負荷証をしたときにどうしても1箇所だけ通らない、でもその箇所は変更したくない…と悩んでしまうことも。そういったことがわりと頻繁にあり、一番悩ましいですね。
岡崎 コスチュームやエネミーを作るにしても、使えるポリゴン数やテクスチャの数がハードによって全く違うんです。ゲーム開発のリソースは無限ではありません。制約の中でどうしたらかっこよくなるかを考え、工夫を重ねることは、ゲーム開発の難しいところであり、醍醐味でもあるのかなと思います。
学生 企画のプレゼンテーションをする際、中身をしっかりと伝えるためのコツがあれば伺いたいです。
王 プレゼンテーションでは、いいアイデアや面白い企画など、相手に“ささる”ものを提示できることが大切です。そのうえで私がプレゼンするときに心がけているのは、「伝える」よりも「伝わる」こと。いくら熱弁しても、相手に伝わらなかったら意味がありません。自分でどう伝えるかを考えるよりも、相手にどう伝わるかを考えることのほうが大事だと思っています。
学生 年間で採用される企画の数はどれくらいですか?
王 年に複数回企画を審査する場がありますが、採用率は毎回違います。部署全体では、一度に200案以上出て1案も通らない時もありますし、数十案でも複数通ることもあります。量よりもクオリティが大切で、ダイヤの原石となるような輝くアイデアが選ばれるのです。
学生 似たデザインにならないように気をつけていることはありますか?
岡崎 自分の想像だけに頼らないことですね。資料を集め、いろんなものを見てエッセンスをインプットするのが制作の第一歩です。それでも似てしまうときは、仕様書に書かれていない設定を自分なりにふくらませてみる。例えばプランナーさんから「今までにない、女の子のクリスマスコスチューム」というリクエストをもらったら、スクール風、アイドル風といったテーマを裏設定として据えてみるんです。さらに、これは「○○○」というアイドルグループの衣装で……と掘り下げることで、バリエーションが広がります。
学生 プログラムはどのようにして覚えたのですか?
鴇田 大学でロボットを動かすためのプログラムを講義で学んだのが最初です。でもそれ以降は、何かやりたいことができたら、それを実現するためのプログラミングを都度学ぶという方法で習得しました。例えば、友達が『PSO2』にログインしてくるのを、パソコンの前ではなくリビングでテレビを見ながら待ちたいと考えたことがありました。そのときは、Twitterを利用して友達がログインしたことを知らせてくれるシステムを作りました。
学生 プログラムを書くときに気をつけていることは?
鴇田 ほかの人が見たときに、ひと目で見て理解できるコードにすることを心がけています。私たちのプロジェクトチームは全体で200人以上の大所帯。プログラマーは数十人、エネミー担当だけでも10人ぐらいはいるのではないでしょうか。『PSO2』は長期的に運営しているタイトルなので、その中でチーム編成や担当が変わることがあります。ほかの人が作ったプログラムを引き継いでアップデートをするとなったときに、わかりづらいコードになっていると、作業にすごく時間がかかってしまうんです。特に、汎用的に使える機能は、その機能を使って作業する人が難しいことを考えずに使用できるというのが理想かなと思っていて。わざわざ中身の実装を見なくても、目当ての機能を呼び出したらパッとスマートに動くのが一番クールだと思うので、そういうようなものを書きたいなと思いながらやっています。
学生 プランナーに必要なスキルは?
王 おそらく不必要なスキルというものはなくて、スキルと思えるようなものがあればなんでも身につけるべきだと思います。いろいろなことを吸収すれば、企画を考えるときに役立つアイデアの引き出しが増えます。ただし、必要なスキルをひとつだけ挙げるとすれば、「強いハート」でしょうか(笑)。プランナーは人数も多いので、会議で自分の企画が通らない時も多々あります。自信のあるアイデアがつまらないと言われたときには落ち込むこともありますが、そこでめげずに、どこがダメだったのかをしっかり考えて、強いハートで次の戦いに挑むことが大切です。
学生 デザイナーを目指すうえで、デッサン力は大事ですか?
岡崎 ひと口にデザインと言っても、モーション、エフェクト、UIなどいろいろな分野があり、デッサン力が直接的には影響しない仕事もあります。でも、絵を描くことを生業にしていきたいのであれば、デッサン力は必須の技術だと感じています。絶対にあった方がいいし、あって損することはありません。一番必要になるのは、私のようにアートワークを担当する人。その次が、モデリングをする人でしょうか。目の前にあるモノや、頭の中で描いたものがすぐに紙の上に表現できるスキルを持っているとすごく有利です。また、私たちクリエイターはずっとひとつのプロジェクトに携わり続けるのではなく、さまざまなゲームを作ります。例えば「龍が如く」シリーズのリアルな絵柄や、「ソニック」のようなかわいい絵柄を描くこともあるので、そういうときに基礎的なデッサン力があると、すぐにその絵柄に順応することができるんです。世の中のイラストレーターのレベルが非常に上がっていて、ゲームの絵もリッチになっていっている中で、お客さんの目を引けるようなクオリティの高い絵を描くためには、デッサン力はマストです。ずっと磨き続けていくべき技術、一生の課題みたいな感じで思っていた方がいいかもしれないですね。
学生 ゲームの開発に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?
王 10歳にも満たない頃ですね。最初にメガドライブというセガのハードをプレイして「これがゲームなんだ」と初めて認識したとき、これを作ってみたいなと思ったのが始まりでした。ただ、私の育った環境では、当時、ゲーム制作を学べる養成機関どころか、参考にできる書籍すらありませんでした。それでも諦めきれず、日本語を学んで来日して勉強し、こうして日本でゲーム開発に携わるまでに至っております。今では、母国でも環境が徐々に整備され、ゲーム開発にあこがれて日々勉学に励んでいる若者が沢山います。
鴇田 実は入社するまでゲームを作ったことがなくて、大学ではロボット工学を学んでいました。でもプログラムを書くのは好きだったので、就活のときにはプログラムを使う会社を志望していたんです。せっかくモノを作るのであれば面白いもの、世の中に役に立つものを作りたかったので、その中のひとつとしてゲーム会社も受けました。それで、ご縁があってセガから「うちに来なよ」と言ってもらえた。セガは昔から面白いものを作っていましたし、『PSO2』の開発にも携われるかもしれないという淡い期待もあり入社を決めました。
岡崎 私は物心がついたときからお絵描き大好き少年でした。初めは漫画家になりたいと思っていたのですが、小学校1、2年生のときに、友達の家で初めてファミコンに触れたんです。ロックマンの1か2だったと思いますが、「うわー! こんなに面白いものが世の中にあるんだ」と衝撃を受けました。ちっちゃなキャラクターが画面の中で動くことにひたすら感動して「これを僕が描かないわけにはいかない」と思った。その頃からずっと、ゲームクリエイターしか目指していませんでした。
学生 ゲームを嫌いになってしまったことはありますか?
岡崎 ないですね。むしろ、クリエイターになる前よりもゲームが好きになった気がします。仕事がうまくいかないときや絵がうまくならないなと悩んでいるとき、一時的に『PSO2』を見たくなくなることはありますが、そういうときはほかのゲームに触るようにしています。すると、自分が直面している問題を解決するためのヒントを得たり、アイデアが浮かんだりと、何かしらの発見があるんです。
鴇田 仕事でプログラムを書き、家に帰ってからはプレイして……と、一日中『PSO2』の画面を見続けていても飽きないですね。いちユーザーとしてプレイしてみて初めてわかることもあるので、日常的に遊んでいるところは私の強みではないでしょうか。ほかに、例えばアクションゲームをやると「この動きはこういうときに使えそう」とか、いろんなアイデアが得られます。仕事目線でも見られるようになったことで、ゲームがより楽しくなりました。
王 自分が作ったクエストを家でも繰り返しプレイしていると、だんだん飽きてくることはあります。でもそれは、ある意味いいことだと思っています。自分が飽きるんだったらほかのユーザーも当然飽きてくるはずなので、それを改善するためにどういった遊びを加えたらユーザーのモチベーションを高めることができるのか、喜んでもらうために何ができるかを考えるきっかけになります。
学生 ゲーム業界を目指す学生にアドバイスとエールをお願いします。
王 プランナーセクションの会議は「殴り合い」と表現されるほどいつも白熱します。たくさんの人と意見をぶつけ合うことでアイデアをブラッシュアップでき、足りないところも見えてくる。みなさんも、いいアイデアが浮かんだら積極的に誰かに見せ、議論してみてください。
鴇田 学生時代はやりたいことをどんどんやるのが一番です。新しいことに挑戦するときには、少なからず問題が生まれるものですよね。思わぬ問題に対して解決策を練ることは仕事でも求められるので、「こういうときにはどうするべきか」と考えることに慣れておくことは大切だと思います。仕事をするうえで「これは最高に面白い」と自信を持って言えることは強みになるので、興味の赴くまま、いろんなことを吸収して感性を磨いてください。
岡崎 仕事だから絵を描かなきゃと思うと、楽しくなくなっていっちゃうんですよね。そうならないために、好きなことを仕事にしようとしていること自体を誇りに思ってほしいし、今の気持ちを忘れないでほしい。就職後も、「俺は好きなことを仕事にしてるんだ」と思って仕事に臨めることはすごくアドバンテージになると思いますし、つらいときにもその気持ちを思い出せば頑張れるはずです。いつか、一緒にゲームを作れることを楽しみにしています。