コース紹介
「夢中」になれる仕事、きっと見つかる!TECH.C.だから様々な「職種」と「業界」が目指せる!
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人生の一部をかける価値がある面白い仕事
覚悟を持って飛び込めば、喜びも大きい
「バイオハザード」の生みの親・三上真司氏が設立したゲーム開発スタジオTango Gameworks。代表作サバイバルホラーゲーム「サイコブレイク」の続編、「サイコブレイク2」を2017年秋、発売。三上氏とともにゲーム業界を歩み、前作「サイコブレイク」ではプロデューサーを務めた木村雅人さんを始め、各部署のエキスパートに集まっていただき、開発秘話など現場のリアルな話を伺いました。
学生 貴社の理念を教えてください。
木村 明確な理念があるわけではないのですが、プロデューサーとして私が感じるのは、コンセプトとユーザーの気持ちをとても大事にしてゲームをつくっているということです。ゲーム制作は、ディレクターやプランナーがつくりたいものとして出した「種」を育てる作業。根を張って幹ができ、枝葉になって1つのゲームが完成しますが、その種には自分たちの好きなものややりたいことが残るよう、芯となるコンセプトを大事にしています。そこから先は、お客さんが「この攻撃、歩き方は気持ちがいいか」「どうすればこのゲームをクリアしようと思ってくれるか」……ゲームに興味を持ってもらうために、ユーザーがどう感じるかという観点をとても大切に考えている会社だと思います。
学生 「サイコブレイク」の制作期間と、続編は何を改善したのか教えてください。
木村 「サイコブレイク1」は約3年、「サイコブレイク2」は約2年です。2では、前作と同じゲームエンジンを使ったので慣れていたこと、またチームそのものの熟練度が上がったことなどから、より短い期間で完成することができました。「サイコブレイク1」のときは、とにかく怖いゲームにしたかったんです。そのため、最初にユーザーがゲームに入ると、突然わけのわからない状況に巻き込まれるようにできています。そこには、ユーザーの気持ちと主人公の気持ちが重なるようにしたいという意図があったのですが、一方でストーリーや秘密が隠された状態で話が進むので、基本的にわかりにくい話になってしまった。その点を踏まえて、「サイコブレイク2」では「主人公は何をしたくてこの世界に入ったのか」「なぜこの世界を攻略しなければならないのか」といったストーリーの“核“となる部分をわかりやすく変えました。また、1作目は、とても難易度の高いゲームにしてしまったので、続編ではもっと手軽に遊んでもらいたいという思いから、最初から最後までバランスよく遊んでもらえるように心がけましたね。
学生 ゲーム業界にプログラマーとして入るために必要な言語やスキルなどはありますか?
中村 「サイコブレイク2」では主に敵、特にボスの挙動の作成を担当したプログラマーの中村です。基本、ゲーム会社では「C++」を使いますが、それよりも重要なのは、必要になったときに新しいものをちゃんと取り入れられる姿勢かな。新しく覚えることを「おっくうだ」と手を出さないのでは意味がありません。自分から率先して習得して業務に取り入れていけるといいと思います。
辻 リードプログラマーの辻です。ゲームプログラマーは、「プログラマー」の部分と「クリエイター」の部分どちらも必要ですが、弊社は「クリエイター」のほうを重要視していると思います。例えば、好きなゲームや趣味を聞いたときにも、どんなところが好きかを分析して説明できるかどうかが大切。プログラマーとしてのスキルは見ればある程度わかるので、それよりは目に見えない部分を重要視しています。
学生 プランナーに必要なことは何ですか?演出面でいちばん力を入れたのはどこですか?
高坂 私は昨年入社し、「サイコブレイク2」では企画とレベルデザインを担当させてもらいましたが、いろいろなことに興味を持つ意識、でしょうか。ゲームや漫画、小説など、自分のライブラリーを増やすと、人に何かを伝えるときに便利です。ゲームをつくるときにも、「この漫画のこんな表現を再現したい」と言えれば、スムーズにコミュニケーションが取れると思います。
木村 少し補足すると、プランナーとしてたくさん面白いものを知っていて引き出しがあることはもちろん大事なことです。先ほど辻が話したことにもつながるのですが、何かを面白いと感じたときに「何が面白いのか」、例えばゲームであれば「ここが他のゲームと違う」、漫画であれば「この設定があるから面白い」など分析ができるとよりいい。それがプランナーとして大事な力じゃないかと思います。
本多 「サイコブレイク2」で、リードアニメーターを担当した本多です。本作の演出面で大切にしたのは、感情の部分。例えば、ステージをクリアして次のステージが始まるときのカットシーンでは、その間にプレイヤーの気持ちがゲームから離れないよう、スムーズにつながる連続性のある演出を心がけました。基本的にプレイヤーはすぐに遊びたいと思うので長くせず、「じゃまにならないけど印象に残るもの」を目指して、場面に合ったアクションと遊びを入れています。
学生 学生のポートフォリオやデモリールを見る際、重視されるものがあれば教えてください。
本多 アニメーションに関しては、ポージングとタイミングが上手な人はハズレがほとんどない。それがよければ大丈夫だと思います。
渡部 「サイコブレイク2」で背景の制作をしている渡部です。背景では「つくりきっている」ことを重視しています。しっかりとつくりきっていると思える作品は、最近少ないと感じています。多いのは、頑張ってつくってあるのに、映す角度や見せ方がよくないパターンです。今はツールが充実して性能もよく、学生でもそれなりのクオリティのものができてしまいますが、その中でもほかの人とは違うものを見せてほしいです。
学生 HPに、「開発環境が自由すぎるくらい自由」とあったのですが、例としてどんなものかを教えてください。また注目している技術などあれば教えていただきたいです。
辻 「開発環境」というよりは、制作できる環境が自由という捉え方のほうがいいですね。プログラマーでいえば、弊社では「アプリプログラマー」と「システムプログラマー」に分かれているのですが、アプリプログラマーには全員に「プランニングプログラマー」という立場になってもらいます。プランニングプログラマーとは、基本プランナーがやることをプログラマーがやってもいいというもの。ほかのセクションに直接発注することも認められています。その点で、プログラマーはより自由かもしれません。
木村 部署や肩書にとらわれず、例えばプログラマーがプランニングに口を出してもいいし、デザイナーがプログラミングに意見を言ってもいい。垣根がない点で自由です。やる気やアイデアがある人は働きやすい環境だと思います。
渡部 アニメーションも同じですね。その場面にどんなモーションがいいかまで考えてつくっています。その点ではプログラマーとは変わりません。
本多 そうですね。物足りないと感じれば「ここで演出を入れよう」など、こちらから提案することもありますね。
辻 注目している技術を挙げるとすれば、ゲームエンジン。ゲームエンジンを使えば、根っこからつくらなくてもそれなりのものができる。素人の場合でもそれなりのレベルのものがつくれます。興味を引かれるという意味では、「Lumberyard (ランバーヤード)」ですかね。これから「UnrealEngine(アンリアル・エンジン)」や「Unity(ユニティ)」に並ぶ存在になるのかなと注⽬しています。
木村 ゲーム開発会社として、表現の幅が増えるような最新の技術には⼤きな興味を持っています。VRなど、ゲームはどうしてもテクノロジーとアートのせめぎあいが続いていく。そこは雑⾷に追っていかなくてはいけないと感じています。
学生 ゲーム開発に携わってよかったこと、大変だったことは何でしょうか?
木村 よかったことも大変だったこともたくさんありますが、一番良かったことはお客さんが喜んでくれること。また、特にこのようなハイエンドコンシューマーのゲーム開発には非常に多くの人が関わっていて、そこにはたくさんの才能があります。例えば僕が何かアイデアを思いついたものが、モデラーやアニメーター、プログラマーとそれぞれプロの手が入ると、たまに100ではなく150、200になって返ってくることがある。「思ったよりメッチャ面白い!」と感じるのは、本当に楽しい瞬間です。一方、大変だったことは、僕はみなさんのようにゲームの専門学校ではなくCG(コンピューターグラフィック)の専門学校に通ってゲーム業界に入ってしまったので、ゲームをつくるということが全く分かっていなかった。先輩たちに、ゲームのつくり方、「遊びをつくる」「面白さをつくる」とはどんなものなのかを教わりながら、ゼロからのスタートだったので大変ではありましたが、非常に面白かったです。ものを生み出す、つくることには明確な答えがなく、終わりもないのでやろうと思えばいくらでもできるので、その点のしんどさはあります。だからこそ楽しんでやりたいなとは思っています。楽しいことと大変なことは表裏一体ですね。
本多 スケジュールと目指すクオリティには常に矛盾があるので、それをどう解消するか、つくっている間は常に大変。また作品が世の中に出て、声が返ってくるのが嬉しいときですかね。ほっとするような嬉しいような……。その声が大きくて、例えば大きな賞をもらえると納得できる。前段階の「この大変さは何だったのか」という疑問に対する答えを与えてもらえる気がします。
渡部 大変だったことは僕も同じで、全部ですね。以前、別の会社でスタッフを統率する⽴場になったときは、創ることに加えて⾊々な管理もしなくてはならず、精神的にも⾁体的にも逃げてしまいたくなるくらいキツかったことはありました。よかったことというと、僕個⼈としてはスタッフロールですかね。昔は説明書の一番後ろに関わった人が書かれていたのですが、ゲーム終わった後に出る。プロジェクトが終わったな、頑張ってよかったなと思う瞬間ですね。
中村 よかったことは、つくっていたゲームが完成することが一番ですね。大変だったことはありません。関わったゲームが完成しなかった経験がないので。完成せずに報われなかったらどうなるんでしょうか。/p>
辻 ここに入社する前、あるゲームのメインプログラマーをしていたのですが、当時は徹夜続きも当たり前でした。今思い返すと大変だったなと。嬉しかったことはクリエイターとして2つ。1つは「ゲームスタッフwiki」に名前が掲載されたこと。もう1つは昔の話ですが、ある著名なクリエイターさんと⼀緒に仕事をしたとき、絵には厳しいことで有名な⼈だったのですが、僕がつけた動きを⾒た瞬間に「すごくいい」と褒めてくれたこと。プロジェクトの最後に「キミ、結構センスがあるね」と⾔ってくれたことですね。
高坂 大変だったのは、木村さんと同じで、まったくゲームの勉強をせずに初めてゲームを1本つくったこと。コンシューマーゲームの制作がこんなに大変なものなのかとかと。これまで20年以上「プレイヤー」としてゲームをしていたところから「開発者」へと思考を転換しなければいけない点が大変でした。よかったこととしては今、人生の初タイトルが出たばかりなので、動画サイトで自分の担当したシーンだけプレイ動画を見ています。プレイヤーが怖がっていたりビクビクしたりしていると「やってやった!」と(笑)。また、いろんな人と話すので趣味が増えたし、ゲームの制作秘話など貴重な話が聞けることも人生経験としてもよかったなと思います。
学生 どのような人材を求めていますか? また学生にエールをお願いします!
木村 共通して求めるのはゲームが好きなこと。そこに人生のある一部をかけてもいいと思える情熱と覚悟を持ってほしいです。仕事を振ってもらおう、何かを教えてもらおうと待っているだけでは何も起こらないので、自分から進んでいくアクティブさ、貪欲さはあってほしいですね。また、チーム作業なのでコミュニケーション能力は大事ですし、ハードな仕事ですので体力も必要だと思います。1つ保証できるとすれば、ゲームをつくるという仕事は、一生のうちのある期間をかけるに値するくらい面白いもの。大変ですが、本当に好きで覚悟を持って飛び込めば、その分返ってくるものはとても大きいと思いますよ!
学生 もし自分が「サイコブレイク」の世界に行ったら何をするか教えてください。
辻 マジレスになりますけど、武器弾薬を溜め込みます。2にジュリアンというキャラクターがいるのですが、武器弾薬食糧を溜め込んで安全地帯でじっとしている…そんな感じになります。
高坂 いま「Tangoで働いている僕」として行ったら、いろんなところを歩き回って「ここはいいな」「表現として怖いな、面白いな」と参考にできる部分を探すかもしれません。でももしちゃんと生きるためにやるのであれば辻さんと一緒で溜め込みます。
木村 「サイコブレイク1」は、チェーンソーを持った人に追いかけられてロッカーに隠れるシチュエーションから始まるのですが、僕、多分そこから一生出ません!
本多 弾を持ってゾンビを撃ちまくって、クリアしようと努力します(笑)
渡部 そりゃもう涙流して逃げますよね。周りの目を気にせず逃げて殺されるパターンです。ダッシュで何もせず、親がいようと真っ先に逃げます。
中村 僕は素直に諦めます(笑)。「サイコブレイク」は基本セバスチャンしか生き残らないので何をしても無意味です。セバスチャンの娘だったらワンチャンあるかもですが、それ以外であれば希望を持つだけ無駄なので……