コース紹介
「夢中」になれる仕事、きっと見つかる!TECH.C.だから様々な「職種」と「業界」が目指せる!
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最先端テクノロジーが未来に描く
よりよい社会と新たな可能性
パソコンの世界基準ともされるOS「Windows」を生み出したマイクロソフト社。その技術はとどまることなく、数年前には考えられなかったような生活を実現している。今回、教育機関のニーズに応える文教営業統括部の中井さんと、出張中のクラウドアーキテクト担当・中田さんにはスカイプで参加していただき、現在のマイクロソフト社の取り組みや問題点、テクノロジーの可能性について貴重なお話を伺いました。
学生 マイクロソフトの理念や社風について教えてください。
中井 現社長のサティア・ナデラが掲げるミッションが「Enpower Every person and every organization on the planet to achive more」。「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」を自社のテクノロジーを使って進めています。すべてのテクノロジーは社会と人のためのものです。なかった時代にはできなかったこと、より良いことをもたらすための技術を世に出し続けることを理念に働いています。さらに、弊社は成長を続けていくことにもこだわりを持っています。そのために大切にしていることが「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包括)」、さまざまな文化を受け入れ、取り込むこと。異質の人と一緒に働くのは大変なことですが、それを乗り越えれば、緩やかですが長期的に必ず成長するということがわかっているからです。いろんな国からの留学生と勉強しているみなさんも、同じ雰囲気があってとても素敵だと思います。また多様性を受け入れるためにもテクノロジーは必須です。違う言語の人と仕事をするときに同時翻訳などの翻訳技術があれば、言葉が通じなくてもコミュニケーションを取ることができます。
学生 マイクロソフトが力を入れている分野は?ヘルスケア分野でどのような取り組みをしていますか?
中田 現在、3つの領域で力を入れています。1つ目は「MR(MixedReality:複合現実)」、これは弊社の「ホロレンズ」という装着型デバイスを使って現実世界の中で複合現実を実現するもの。2つ目が「Internet of Things」、IoT(アイオーティー:もののインターネット)。さまざまなものがインターネットで繋がることで得られる情報を使って、よりよい社会を作ろうとしています。3つ目がAI(人工知能)の技術を使った取り組みです。ヘルスケア分野では、弊社のテクノロジーを使ったヘルスケアの働き方改革や、新薬を作る支援、MRを使った手術のシミュレーションなどに取り組んでいます。例えば、画像診断の支援にクラウドの「Azure(アジュール)」を使ったり、ホロレンズを使って薬が体内に入っていく様子を3次元で見たり、遠隔医療でもMRを使う試みなどです。
学生 2020年の東京オリンピックに向けてマイクロソフトではどんな取り組みをしていますか?
中田 東京オリンピックに向けて総務省では、社会全体のIT推進に関して5つのプロジェクトを進めています。①IoTを使った「おもてなしカード」と呼ばれる都市型のサービスのコード化 ②翻訳アプリなどで言葉の壁のない社会の実現 ③サイバーセキュリティー強化による安全なサービス環境 ④テレワークやサテライトオフィスなど、期間中にも事業が継続できる仕組み ⑤キャッシュレス化です。これらのプロジェクトを弊社のテクノロジーを使って、さまざまなパートナーと協業しながら実現に向けて動いています。例えば、日本語の機械翻訳を実用レベルにするため、2016年に機能の精度を上げるプロジェクトをスタートしました。また2014年からは「働き方改革週間」を開催し、スカイプなどの情報通信技術を使った「テレワーク」という柔軟な働き方を提案しています。これはまさに今、違う場所にいる私がこうしてみなさんとお話しているようなものです。
学生 インターネットを使っていてサイバーアタックが起きたとき、データがなくなるなどのリスクはどう回避しますか?
中井 技術が進化して、インターネット上につながっていくものが多いほど、確かにリスクは増えます。弊社ではいろんなツールを提供していますが、同時に開発では、その安全性にも力を入れています。実際、セキュリティのテクノロジーはかなり高度になっていますので、私たちがソリューションやテクノロジーを学校さんに入れてもらう際にはセキュリティ対策キットのようなものとあわせて提案し、起こる前に万全の対策を整える形で対応しています。
中田 そうですね。今弊社には10万人の社員がいて、全員がWindowsを使っています。そのすべてのパソコンがインターネットにつながっていて、リアルタイムで情報を取り、それをベースに新しい防御の仕組みを作っています。そのため、非常に安全に使っていただける環境が実現できるようになっています。
学生 新しいものを作る時、実験にはどのくらいの時間をかけますか?
中井 おそらく決まった期間はないと思います。試作して何度もテストを重ねますし、社員に使ってもらい、バグが出たらすぐに直す。期間は定かではありませんが相当な実験をします。また社員以外にも、弊社の新しいテクノロジーを使ってくれるサポーターのような人が全世界にいるので、そこで出たフィードバックを反映しながら製品として出します。
学生 韓国では少子化が進み、先生の高齢化も進んでいます。新しい技術を学ぶにはどうすればいいと思いますか?
中井 まさに日本の教育市場にも同じ課題があります。小学生からテクノロジーの教育が必要と考え、政府は2020年ごろまでに学校のパソコン導入率を倍にすることを目指しています。当然、教える先生にもパソコンスキルが求められるのですが、仕事が多くて新しい技術を学ぶ余裕がない。そこで弊社からは学校や自治体に対し、クラウドの導入を推進しています。先生の仕事がクラウド上に乗れば、自宅でも職場と同じ環境で仕事ができたり、これまでの作業を省略することが可能です。技術は「作業の効率化」に非常に有益。効率化によって先生の時間を確保し、新しい技術の勉強に回すことができれば、結果として子どもたちに教えられることも増えると考えています。
学生 IT業界は女性が少ないですが、今後増えると思いますか?
中井 なぜかこの世界は女性が少ないですよね。物事を開発する能力など、テクノロジーに男女差はないはずなのですが......。女性だからこそできることもあると思うのでどんどん増えてほしいです。「マイクロソフトリサーチ」という研究機関で働く女性研究者が、AIの技術を使ってパーキンソン病の患者さんを救った話があります。彼女は、患者さんの手の震えを分析し、それを抑える小型のデバイスを開発しました。テクノロジーが病気の人を救えるのは素晴らしいことです。また、今後技術が進化すると、私たちに求められる素養は、このように困っている人の気持ちを汲むなど人間にしかできないこと。技術を理解し、人間の心も理解できると、将来的に活躍する市場はたくさんあると思います。
学生 プライベートな時間は取れていますか?また、上司、職場の人たちとの付き合いはありますか?
中井 忙しくはありますが、確実にプライベートの時間はあります。昔のように定時にしばられた働き方はほとんどありません。私は子供がいるので、子育てができるよう19時までには自宅に帰ります。残業がある場合は家に帰って子供が寝てから。パソコンがあればいつでもどこでも仕事ができるので、会社にいなくてもいいんですよね。テクノロジーのおかげで、プライベートの時間は充実して取れています。また、上司や先輩、同僚との付き合いですが、人との関係はどこの社会でもあるもの。人と関係することで、成長ができたり、知らなかったことが知れたり、人の気持ちによって温かいものがもらえるので、やはりコミュニケーションはとても大事です。みなさんも同じプロジェクトをやっている人と、プロジェクトで関わるだけでなく、その人がどんな考え方をして、何を将来したいか、世の中にどういう貢献をしたいか、などの考えを聞きながら一緒に作業するといいと思います。私もそのような場は大切にしたいと思っていて、忙しい時でも30分一緒にコーヒーを飲んで、状況を聞くなど心がけています。月に何回かは飲み会や食事も入れて、仕事上だけではなくその人を理解するような機会は持つようにしていますね。
学生 プロジェクトを遂行するとき、どのようにモチベーションを維持していますか?
中井 社員のモチベーションを保つことは会社としても大切なことです。管理者としてメンバーのモチベーションを維持するために、1対1で話す機会を作っています。問題は解決できているか、何かサポートできることはないか、成長を自分で実感できているかなどを確認しますね。そして、やったことがうまく行った場合にはきちんと評価する。定期的に勉強会やトレーニングで、日々出てくる新しい情報を吸収できるような機会を設けることもモチベーション維持につながると思います。
学生 マイクロソフトに入社するための資格やスキルは何でしょうか?
中井 まずは優れた技術のスキル。その上で、今後テクノロジーがどんどん入ってくる社会で、弊社が重視しているのが「6C」のスキルです。コミュニケーション、コラボレーション(協同作業)、クリエイティビティ(創造性)、キュリオシティ(好奇心)、コンピュテーショナルシンキング(理論的な考え方)、クリティカルシンキング(疑問を逃さない考え方)。私はチームワークをとても大切にしています。新しい技術は一人ではなくチームで作るもの。伝えたはずのことと違うことが起こるのは、コミュニケーションがうまくできていないからです。自分の考えていることを正しく相手に理解してもらうには、コミュニケーションスキルが非常に大切だと思います。
学生 これから業界を目指す人にエールをお願いします。
中田 以前、コンピューターの技術では非常に多くの人の力がないと実現できないことが多かった。今でもWindowsOSなどは多くの開発者の手によるものですが、一方でクラウドサービスのように一人のアイデア、力で生み出されているものも少なくありません。みなさんが何かを実現したいと強い思いを持てば、世界中で使われるようなサービスも作れます。頑張ってください。
中井 技術の勉強はもちろんですが、世界中で起こっていることを積極的に知っておいてほしいと思います。技術は世の中を良くするためにあるものです。目の前だけでなく周りで起こっていることも理解する姿勢を持ってもらえるといいかなと思います。