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NVIDIAにしか解決できない問題に取り組みながら最新の技術を提供していきたい
AIを活用した職を希望するなら応用先の専門知識も必要です

コンピューターグラフィックスや演算処理に欠かせないGPUの世界的トップメーカーNVIDIA社。近年では、AI(人工知能)や自動運転など新たな分野でも期待される同社のテクノロジー。テクニカルマーケティングという立場で、横断的に製品を担当し、その魅力を世に伝える澤井さんに、これからの技術の可能性などを伺いました。

特別講師

テクニカルマーケティングマネージャ
澤井 理紀

2009年にNVIDIA入社。プロフェッショナル ビジュアライゼーションのソリューション アーキテクト、仮想デスクトップ ソリューションの事業開発、コンシューマー マーケティングを経て、現在はテクニカル マーケティングを担当。

学生

  • 1年プログラマー専攻 高橋さん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 松井さん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 本脇さん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 吉沢さん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 藤原さん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 パクさん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 チョウさん
  • 1年スーパーAIクリエイター専攻 チェンさん

いち早く最新技術に触れることできるエキサイティングな日々

学生

御社の経営理念や取り組んでいることは何でしょうか。

澤井

弊社創業者でありCEOのジェンスン・フアンの言葉を借りると、「We are learning machine(我々は学び続ける機械である)」、「Be intellectually , honest(知的に誠実であれ)」。そして「Measure yourself against the speed of light(今置かれた状況でベストを尽くせ)」。このような考え方で仕事していれば自ずと成果が出る。これを企業理念とし、働いています。弊社が取り組んでいるのは、非常にリアルなグラフィックスや自動運転、自律で動くロボットなど、我々のテクノロジーでしか解決できない問題です。経営方針としては、誰にでもできることではなく、弊社以外では実現できないことに的を絞り、製品開発や戦略を練っ ています。案件に応じて各部門で連携しながら、本社メンバーも含めてフラットな環境で働いていますね。

学生

どのような仕事をされているかを教えてください。

澤井

私はテクニカルマーケティングという立場で、技術的にむずかしいことを、パートナーやお客さん、メディアに向けてわかりやすく伝える仕事です。プレゼンテーションやドキュメントなどの資料を作成し、製品の魅力を正しく届けるよう心がけています。

学生

NVIDIAに入ってよかったこと、今後の目標はありますか?

澤井

よかったことは、最新のテクノロジーにいち早く触れられること。興味のある分野なので、非常にエキサイティングです。今、弊社ではどんどん新しいことにチャレンジしています。例えばゲームであれば、映画並みのグラフィックスを実現する「GeForce RTX」という仕組み。加えて、日本でのAIの普及をより一層促進するためにも、このようなテクノロジーをもっと活用してもらえるように努力し、社会貢献に繋げていきたいと思います。

役割ごとに求められるスキルは異なる自己管理しながら業務に励んでいきます

学生

業界を目指したきっかけを教えてください。

澤井

私が10代のときから自宅にパソコンがあり、ちょうどそのころインターネットが普及し始めました。ざっくりいうとIT機器の可能性に惚れ込んだ、「ITが好き」がもとですね。その中でもコンピュータグラフィックスに興味があり、映画やゲームで3DCGに出会い、こういったところで仕事をしてみたいと思ったのがきっかけです。

学生

学生時代、夢中になっていたことはありますか?

澤井

先ほどお話しましたが、コンピュータグラフィックスです。ゲームやCG映画を観て、「どうしたらこんなものが作れるのか」と、自分でNVIDIAのGPUが入ったパソコンや数十万円もするCGソフトを買ったり、そのためにアルバイトをしたりしていました。

学生

今までで一番大変だったお仕事は何ですか?

澤井

大変なことは終わるとすぐに忘れちゃうのですが…(笑)。私は2009年NVIDIAに入社した当時、企業向けのグラフィックス製品のプリセールスエンジニアをしていました。その後、営業やコンシューマー向けの業務に移動し、今はテクニカルマーケティングにいます。自分の役割が変動するたびに求められることや知識も変わっていくので、状況に応じてキャッチアップしながら進めていくのはチャレンジでした。

学生

普段仕事している中で気をつけていることはありますか?

澤井

健康でしょうか。自分のパフォーマンスが出せるような体調管理ができてこそ、仕事が乗って成果が出せると思っています。肉体だけでなく精神もそう。働くために休むときはしっかり休む、とメリハリをつけることは大事にしています。

自動運転の技術は進んでいる
メリット、今後の課題は「安全性」

学生

現在、車の自動運転でできることを教えてください。

澤井

技術的にはかなりできていると聞いていますね。自動運転のレベルは1から5までありますが、現在、市販車のドライブで採用されているのは「レベル2」あたりでしょうか。レベル2は、AIがアクセルとハンドルの両方を制御しますが、基本的にはドライバーがいてその運転をAIがサポートするというもの。そこにちょっとした自動運転は実現可能な状況といえます。弊社でも車載向けのコンピュータを出していますが、「DRIVE Xavier(エグゼビア)」は、緊急時以外はほぼ自動運転が可能なレベル3、また 「DRIVE PEGASUS(ペガサス)」では、緊急時も含めて運転が自動化されるレベル4や5に向け、自動運転を処理するために必要な性能が出せるものです。これだけのコンピューティング能力があれば、おそらく自動運転でも技術的には十分な成果が出ると思っています。

学生

自動運転の最大のメリット、また今後の課題は何でしょうか?

澤井

やはり安全性の向上ではないでしょうか。コンピュータですので、居眠りもしませんし、人為的ミスは大幅に削減できると思います。同じく、今後の課題も安全性です。人命に関わることなので、十分に安全性を検証してからでないと世に出せません。弊社の「DRIVE Constellation(コンステレーション)」というAVシミュレーターでは、仮想環境で自動運転を検証することが可能です。このようなサービスをパートナーさんに提供することで、課題解決のお手伝いをしています。

学生

自動運転で状況によってカメラの認識が低下した場合の対策、また事故が避けられない場合、AIはどのような判断をするのでしょうか。

澤井

もちろんカメラなどで安全性を見ているのですが、例えばカメラが認識できないような悪天候の場合は、レーダーやLidarを使ったり、HDマップと自車位置をすり合わせたりすることによって判断できます。ひとつのセンサーだけに頼り切って制御するのではなく、別の機能とともにそれぞれの特性を補うことで対策し、安全性を保つことが重要です。また、AIは人間が定義したことに従います。さまざまなケースを想定した上で安全性を考慮し、「AIにどのような判断をさせるか」は、人間側が決めるものです。避けられない事故が起こるケースもあると思いますが、その際の判断のさせ方は、各種メーカーさんの方針によってさまざまだと思います。

運転の楽しみ方によってレベルを選べる時代がくるかもしれない

学生

自動運転レベル3以降の見通しを教えてほしいです

澤井

現在はレベル2あたりですが、3、4を超えてレベル5実現のほうが早いかもしれません。なぜかというとレベル5は「自家用車」向けではなく「ロボットタクシー」などの応用。ロボットタクシーであれば、高価なセンサーを多数付属しても経済的に成り立ちやすいのですが、レベル3、4の自家用車となると、見た目や価格などのバランスを取らなければなりません。弊社では車を作っていないので「いつ」ということはできませんが、例えばAudiさんは2020年にレベル3、VOLVOさんは2021年にレベル4を実現できるといったアナウンスを出しています。

学生

自動運転のレベル5が実現するとき、運転する楽しみは失われるのでしょうか。

澤井

すべての車がレベル5になるかどうかはわかりませんが、レベル5の車にはハンドルすらないので運転する楽しみはないかもしれません。レベル2〜4であれば、危険な場面ではAIがブレーキを踏むなど、運転そのものを楽しめるうえに安全性はさらに向上するのではないかと思います。

より身近な場面で活躍が期待される AI人間にしかできない新たな仕事も

学生

AIの進歩によって人の仕事が奪われることはあるのでしょうか?またAIのメリットを教えてください。

澤井

AIの進歩とともに、経済的な判断はしなければならないでしょう。人間よりもうまくできることに関してはAIに任せるべきです。一方で、人間はAIにできないことにフォーカスして、よりクリエイティブな活動に注力できる。逆にAIを活用した新しい仕事が生まれるかもしれません。AIによって従来の人間が作るアルゴリズムでは解けなかった問題が解決できたり、新しいチャレンジの可能性があるのは、とても大きいメリットだと思います。

学生

今後のAI業界はどうなっていくと思いますか?

澤井

2012年に「ILSVRC」という大規模の画像データを使った画像の認識と分類の精度を競うコンペティションで、AIが成果を上げて大きな注目を集めました。その時から急速にAIのモデルやディープラーニングの構造は複雑になり、精度が上がったことで、現在ではますます新しい分野への応用が進んでいます。よりコンピューティングパワーも必要とされ、弊社のような高速のプロセッサーが求められているのが現状ですね。これからは、今まで研究段階にあったものが世に出てくる段階に移るかなと思います。買い物先や自動運転など、どんどんみなさんの身近な現場でAIが広がっていくのではないでしょうか。

幅広い分野で有効なAIやレイトレーシングの活用もより広がっている

学生

AIによって今度大きい影響を与える分野は何だと思いますか?

澤井

AIはどの産業でも使えるテクノロジーです。さまざまな活用方法で期待できますが、なかでも、自動運転を使った運輸交通産業や、ロボットによる製造――リテール(小売)の仕組みは大きく影響を受ける産業なのではないかと思います。

学生

レイトレーシングの仕組みや活用法を教えていただきたいです。

澤井

コンピュータグラフィックスで、光のふるまいをシミュレーションする技術「レイトレーシング(ray tracing:光線追跡法)」ですね。すでに映画では実写と同じくらいのクオリティでCGが再現できています。仕組みとしては、仮想的なカメラを使って、人間の目から受ける光の動きを、逆に目(視線)から追跡していくものです。具体的には、レイ(ray:光線)をカメラから飛ばし、その先の物体のマテリアル情報に応じてレイを計算しています。例えば、屈折や反射、拡散などによる光の動き。これらを計算することで、非常にリアルな陰影が再現できるのです。ただしとても重い処理となるので、弊社ではそれに向けて「RTコア」というプロセッサーを「GeForce RTX」には搭載しています。今までは主に映画のCGなどで活用されていましたが、現在はリアルタイムグラフィックスゲーム分野にも広がっています。

気軽に最新技術にアクセスできる環境貴重な時期を最大限に活用してほしい

学生

AI関係の仕事で必要なスキルや、勉強しておくべきことは何でしょうか。

澤井

一般的なAIを作るために必要な知識は、数学やコンピュータサイエンスなどですが、おそらく今、学校で勉強されていることがとても大切だと思います。TECH.C.さんにはしっかりしたカリキュラムが備わっているはずですので、まずはそこに集中することが一番の近道。一方、AIを何かに活用するのであれば、応用先の知識も必要になります。例えば、ロボットであればロボット工学などの専門知識も重要ですし、AIを使ったビジネスを考える際には経営学的な知識も要求されると思います。

学生

若い世代に期待することやエールをお願いします。

澤井

私の学生時代に比べると、恵まれている時代です。ハードウエア機器は安くなり、ソフトウエアもオープンソースなど無料で利用でき、最新のテクノロジーにアクセスしやすい環境。好きなことに没頭できるのは、学生ならではの特権です。勉強以外で何かを作ってみるのも経験になると思います。恵まれた環境の中、時間も体力もある貴重なこの時間を活用してがんばってください。