
実現できるクオリティ
Unityを通じて生まれてくる「新しい」が楽しい
クオリティの高いゲーム制作をサポートしたい
世界中で最も使われているゲームエンジン「Unity(ユニティ)」。現在はARやVRなどさまざまな分野でも活用され、より多彩なプロダクトを生み出すツールとして注目される。研究を重ねた論文をもとに、学会など多くの場でUnityの魅力を発信している簗瀬洋平さんに、学生の疑問や悩みにお答えいただきました。
特別講師

2012年ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同 会社入社。プロダクト・エヴァンジェリストとして、 学術研究に励み、教育現場を主軸に活躍。「ワンダと巨像」「FolksSoul 失われた伝承」「魔人と失われた王国」などを手がける。
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学生
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- 2年スーパーゲームクリエイター専攻 熊倉さん
- 2年スーパーゲームクリエイター専攻 新妻さん
- 2年ゲームプログラマー専攻 松下さん
- 1年スーパーゲームクリエイター専攻 田中さん
- 1年スーパーゲームクリエイター専攻 櫃割さん
- 1年スーパーCGクリエイター専攻 吉澤さん
- 1年スーパーゲームクリエイター専攻 石渡さん
より幅広いプロジェクトに関われる
ゲームエンジンならではの楽しさがある

より幅広いプロジェクトに関われる
ゲームエンジンならではの楽しさがある
- 学生
どのようなお仕事をされているか教えてください
- 簗瀬
私の会社でのポジションとしてはプロダクトエバンジェリスト。Unityのよさを世の中に広める仕事をしています。私は学術担当なので、大学などに行ってその便利さを伝えて、使っていただけるように説明する。一見、セールスのような仕事ですが、私たちは実際に自分たちで使い、研究結果を学会で発表しています。このように論文などを提示しながら具体的にUnityの魅力を伝える役割です。実際に、日本の学校で使われているUnityの「教育用ライセンス」は、現在55,000本を超えています。「パーソナル」を使っている人を差し引いてもかなり大きな数字です。
- 学生
ゲーム制作会社からゲームエンジンの会社に関わろうと思ったのはなぜですか?
- 簗瀬
もともと私はゲーム会社で最新技術を使ってゲームを作る仕事をしていました。研究開発部署に所属するなど、やっていることはそれほど変わりませんが、ゲーム会社の中にいると自分の会社にあるものにしか関われません。時間も長く、特に私が関わってきたプロジェクトは1本を作るのに3〜5年とかかかることもありました。一方、Unityというゲームエンジンを使えば、あらゆるプロジェクトに関わることができますし、より幅が広くなる…そこにやりがいや魅力を感じました。
世界で一番文句を言われてよりいいものが生まれる

世界で一番文句を言われてよりいいものが生まれる
- 学生
Unityの経営理念は何でしょうか?
- 簗瀬
弊社は「ゲーム開発を民主化する」といった理念とともにいます。ゲーム開発は手順が多いものです。頭の中のアイデアを実際動くものにするには時間がかかるし、ちゃんとした形で社会に出すまでには大変な作業がある。そこに時間を取られず、誰もが簡単にいいゲームが作れることを目指しています。今はゲーム開発以外、インタラクティブ(双方向性)なコンテンツやデジタルなものづくり全般を「Unityによって簡単にする」こともミッションのひとつです。
- 学生
会社として誇れるもの、Unityの強みを教えてください。
- 簗瀬
まず、明らかに世界で一番使われているゲームエンジンであること。Unityによって毎日のように新しいコンテンツが出てくることが最も誇れる点だと思います。また、ほとんどのことが実現でき、どんなハードにもプロジェクトを出すことができる。そのような総合的な部分で優れています。一方で、世界で一番使われているエンジンは、世界で一番不満や批判も出てくるエンジン。しかし、フィードバックを受け、改良を繰り返すことでよりいいものを生み出せることもUnityの圧倒的な強みです。
- 学生
世界的に見てどのくらいの企業、ゲーム会社が使っているのでしょうか?
- 簗瀬
世界のデバイスのうち、約30億にUnityがインストールされています。その中で、Unityで作られたアプリケーションのインストール数は280億本、世界人口の3倍です。モバイルゲームの半分はUnityで作られています。また、世界のAR(拡張現実)やVR(仮想現実)コンテンツの60 %以上がUnityを使ったもの。AR・VR企業の90%がUnityを導入しているとの調査結果が出ています。
大きなタスクを細分化し、
ひとつずつのステータスを可視化して実現

大きなタスクを細分化し、
ひとつずつのステータスを可視化して実現
- 学生
Unityはゲーム以外のどのような業界で使われているのでしょうか。また今後の展望などを教えてください。
- 簗瀬
ARやVRのコンテンツやシステムを作る会社の多くは、Unityを使っていると思います。例えば、建築やアート、インタラクティブアート、土木、医療、自動車、ロボット。特に、建築と自動車に関しては業界の規模が大きいので、比率は多いようです。今後は、すでに使われている建築やアート、医療向けのサポート強化はもちろんですが、新しい分野にも力を入れていきたい。Unityの使われ方は予想できません。これまで考えてもいなかったところからアイデアが出てきたので、今後も意外なジャンルで出会いがあるとおもしろいですね。社内のチャットツールで「こんなところでUnityが使われていたよ」など、毎日のように情報が流れてきて、それを見ているだけでも楽しいです。
- 学生
開発をする際に一番心がけていることは何でしょうか?
- 簗瀬
仕事には必ず“目標”があり、それを達成するために必要なことを成し遂げることです。目標は個人の中にしかないので、共有するには数字で確認できることが大切。例えば予算をどのくらいに収めるとか、何本売れるゲームを作るか……具体的な数値目標に対しどう働くかを心がけています。“おもしろい”ことを前提として、どれだけ多くの人に楽しんでもらえるかは、数字で評価できることです。
- 学生
長期間の開発でモチベーションを維持するためにはどうしたらいいですか?
- 簗瀬
ゲーム開発では3年や5年かかるものもありますが、いつ終わるかわからない状況はとても厳しいですよね。その場合、「何ヶ月で」と細かく区切ってみてください。これはゲームの作り方も同じで、例えばボスを倒すまでには中ボスがいて、中ボスの前には小ボスがいて…と、まさに目標。「3時間でこれをクリアする」「1回のチャレンジでここまで」など、細分化した目標を立ててひとつずつ実現していくと、短期の目標の繰り返しになります。それを積み重ねていけば、ゴールだけ見ると長期間に感じることも「今ちゃんとここまで歩いてきた」というのが見えるので苦しさが減るかもしれません。タスクを細かくして、達成できたことを可視化すること。その際、やり直しの期間も計算に入れておくこともポイントです。スムーズに進めばその分は先行して進めることができるのでやりやすいと思います。
VRが特別なものでなくなる未来
そのときに基礎を習得していれば幅は広がる
VRが特別なものでなくなる未来 そのときに基礎を習得していれば幅は広がる
- 学生
VR、ARの未来を簗瀬さんはどう見ていますか?
- 簗瀬
AR、VRの未来は、誰も「AR」「VR」という言葉を口にしなくなることだと思います。映画の「バック・トゥー・ザ・フューチャー」は観たことはありますか?ホログラムのサメが空中を飛び交うなど派手な未来はもちろんそうですが、一方でその当時、みんながスマートフォンを持って歩く世界だって誰も想像もしていなかった。ですから、未来はあまり想像できないものだと思っています。「VR」が話題になっているうちは、それは特殊な技術であって日常ではない。「VR」と言われなくなった世界がゴールだと思っています。普通に誰もがスマホを持たずにスマートグラスをかけて、空中に浮かんでいる像を見ながら誰かと話している…そんな未来かもしれません。
- 学生
VRやARだけでは仕事にならないと聞きますが、他にどのような技術を身に着けたらいいのでしょうか?
- 簗瀬
「AR、VRで開発をします、お仕事ください」と言うだけでは厳しいかもしれません。現段階でのAR、VRはまだ特別な技術だと思われていて、何に使うかは理解されていない。例えばCGを使ってインタラクティブに動くものが作れたり、人間の感覚に訴えかけるようなシステムを作れたりする、その基礎技術としてARやVRが必要なのです。このようなプロダクトは細かい技術の集合で作られていて、ARやVRは表現の手段のひとつ。いろんな技術を持った上で結果的にARやVRが作れます。だからAR、VRだけをやっていきたいと表明すると「できることの幅が狭いのかな」と思われてしまうかもしれません。実際に今ARやVRで活躍している人は、プログラミングやCG、デザインの技術を応用して実現しています。つまり、基礎技術ができていれば、新しい技術が出てきたときも対応できますし、ある程度好きなことに入り込めると思います。
チーム全員が納得できるビジョンを定め一度決めたら方向を変えない
チーム全員が納得できるビジョンを定め一度決めたら方向を変えない
- 学生
仕事でアイデアを出すとき、どのように模索していますか?
- 簗瀬
“アイデア”の捉え方によりますが、何かを思いついて出すということはあまりありません。というのも“何をやるか”が決まっていれば、考えれば自ずと答えは出てくる。何か考えなくちゃいけないと思って考えることはほとんどない、と私は考えています。ゲーム業界では、材料が何もない状態から「何でもいいから好きなことを作ってください」ということはありません。何かしらの条件が決まっているので、それをもとに考えると必ず答えが出ると思っています。
- 学生
チームでゲーム制作する上で必要なこととは?
- 簗瀬
まずはタスクをちゃんと分けることでしょうか。また、ビジョンを共有することも非常に重要です。例えば、私はゲームジャムが好きで結構行くのですが、数人集まったときに、個々人がそれぞれ自分のゲームを作ろうとしてしまうんですよね。多くは、最初に話し合わず、アイデアを書き出し、そこから投票で絞って全員納得した上で作るといった流れです。チームで制作するのであれば、最初だけでも、こんなゲームにしようと全員が納得するまで話し合うこと、そして一度納得したものを絶対に曲げない、この2つは必要でしょう。
- 学生
ゲームをプレイしているときに、制作者目線で感じることはありますか?
- 簗瀬
基本的には普通のユーザーとして楽しく遊び、あとで振り返って考えることが多いです。技術に関してもちろん考えますが、あまり開発者目線でゲームしてしまうと文句ばかり出てくる(笑)。それで楽しめなくなる人もたくさんいるんですよ。私の場合、基本的にはユーザとして楽しく遊ぶ自分がいて、それと並行して開発者目線としていろいろ考える自分が別にいるという感じです。また、例えばおもしろかった/おもしろくなかったと感じたときには、なぜおもしろかった/おもしろくなかったのかを突き詰めて考えることも重要だと思います。
作りながら技術を高め、できることを具体的にひとつずつ増やす
作りながら技術を高め、できることを具体的にひとつずつ増やす
- 学生
業界に入るために必要なことは何でしょうか?
- 簗瀬
まず「ゲーム業界」という抽象的なものが相手だと考えないこと。結局、入るときは会社と個人の1対1です。会社もそれぞれ求める人材が違うので、まずは自分が具体的に何をできるのか把握する。その上で、入りたい会社が何を求めているのかを理解することがとても重要だと思います。学生時代に、CEDEC(セデック:Computer Entertainment Developers Conference)に行ったり、会社説明会に足を運んだりして、現場の人たちに深い話を聞きながらどんな人がほしいのかを探ってください。私も採用を10年以上やっていましたが、履歴書や面接だけでその人の能力がわかるわけではありません。ただ、作品があると結構わかるものです。おもしろい作品はもちろん、自分で作ったライブラリーや書いたシェーダーなど、相手に魅力的だと思わせるものを提示できるかどうかで最後に差がつきます。
- 学生
業界を目指す学生が今からできることは何でしょうか?
- 簗瀬
1日1時間英語の勉強をすることですね。例えばGDC (Game Developers Conference)の記事を原文で読めるか、映像で理解できるか、海外の人と会話できるかなど、英語を習得できていれば仕事でもプラスに働くので今のうちからがんばってください。ゲーム会社に入ってから自然に身につくものではありません。私は現在も毎日勉強していますし、学生時代から勉強している人とそうでない人の差は年を重ねるほど明確になってきます。最近では、スマートフォンのアプリもクオリティが高いので、意識して取り入れてほしいです。
- 学生
最後にアドバイスをお願いします。
- 簗瀬
具体的に「できること」と「使いこなせる技術」を身につけてください。作品を作りながら、技術を高め、幅を増やすことが重要です。これはプログラマーだけではなくどんな職種にも当てはまります。ゲームデザイナーの場合は、まずはちゃんと動くものを作る、プログラマーの人は具体的にものを作りながら深い技術を身につける。アーティストはクオリティの高いものを作ることに加えて、ローポリなど軽い技術で再現できるようになる。最近では、アーティストがコードやシェーダーが書けることも強みになります。ひとつでも多く、具体的に使いこなせる技術を身につけてください。いつ、どんな偶然に会うか分からないので、スマホやタブレットに入れて持ち歩き「いつでも見せられる」ことが大切です。