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半導体のテクノロジーによって
「新しい体験」をさまざまな形で
実現したい
「リアル以上の体験」も
可能になるかもしれません

アメリカ・カリフォルニア州に拠点を置く半導体のトップメーカー・インテル。近年は、同社ならではのテクノロジーを活かし、幅広い分野にわたって新たな概念を生み出すサービスを展開する。同社日本オフィスで執行役員常務技術本部本部長を務める土岐さんを訪問。和やかな雰囲気に包まれ、終始笑顔あふれる有意義な対談が実現しました。

特別講師

執行役員常務技術本部本部長
土岐 英秋

1988年インテルジャパン株式会社(当時)に入社。デバイス設計や国内メーカーのノートブックPC開発に向けた技術支援に携わる。2002年 技術本部 技術部長に就任。Centrino® プラットフォームの発表に際し、モバイル戦略を技術面より支える。2006年 技術本部 統括技術部長に就任。クライアント全般の技術面を統括。2010年 技術本部 副本部長。2011年 技術本部 本部長。2012年より現職。

学生

  • 2年 ロボット・AIエンジニア専攻 福田さん
  • 2年 ロボット・AIエンジニア専攻 安心院さん
  • 2年 ロボット・AIエンジニア専攻 杉山さん
  • 2年 スーパーITエンジニア専攻 関口さん
  • 1年 スーパーITエンジニア専攻 コウさん
  • 1年 プログラマー専攻 安保さん

1つのアイデアが形となって世に出る苦労もまたやりがいにつながる

学生

御社の雰囲気について教えてください。

土岐

弊社はエンジニアリング、半導体を販売する会社ですので、技術が好きな人がたくさんいます。雰囲気としては非常にオープンなカルチャーです。私を見ていただくと分かるかもしれませんが…(笑)。社内では「部長」「課長」などタイトルを使った呼び方はしませんし、社長ですら「さん」付けです。コミュニケーションを重要に考えていて、できるだけそのハードルを低く、社員みなさんのアイデアが出やすい環境を心がけている会社だと思います。

学生

どのような仕事、お仕事をされているか教えてください。

土岐

現在は営業として製品を売っています。加えて、お客さんが困った時のために、技術サポートをする部隊をまとめて見ているのが私の仕事です。かつては 現場のサポート担当をしていましたので、お客さんに怒られた経験も役に立っています。きっと自分自身が楽しめているからずっと続けていられるんでしょうね。

学生

今の仕事にどのようなやりがいや苦労を感じますか?

土岐

ほとんどのサービスは、弊社だけでは完成しません。お客さんと一緒に製品を作り上げたり、サービスやソリューションになったりします。アイデアベースのものが、最終的に実現して世の中に出ていき、それをたくさんの方に使ってもらえる。さらに喜んでいただけるところを見ると本当にやりがいを感じます。一方で、新しいチャレンジには問題が山ほど出てきますし、期限もあります。締め切りが迫るとやはり大変ですが、逆に一緒に苦労した先には、企業の関係性を超え、達成感を共有した「新しい人間関係」ができる。それもまたやりがいかなと思いますね。

5Gになった時、スマホはどう変わる? 今は想像できない「普通」が未来にはあるかも

土岐

私からの質問なのですが、今のスマートフォンは通信だけでなく、お財布やスケジューラーなど、これまでの携帯電話よりも人との密度が濃いと感じています。この先、5Gになった時、みなさんはどのようなことを期待しますか?そこが次のイノベーションが起きるヒントかなと思うのですが…。

学生

今ですと、スマホはポケットなどに入れるもの、ロボットはそこにいるものですが、「物体」として存在していることに私は違和感があります。例えば、ホログラム的なもの、ガラスの中にディスプレイが入る何かが実現すれば、人を認証したタイミングで目の前にスマホのようなものが出てくる。そのようになるとおもしろいかなと思っています。

土岐

なるほど、非常にいい発想ですね。同じく私も今の形状ではなく、データが人を追う世の中になる可能性を漠然と考えています。コンビニに入ってジュースを取って出たら、自動的に課金されるような…キャッシュレス以上の世界かもしれない。電車を使う際も改札なしで、乗ったら自分が座る席が用意されて、最適なところで降りる手順まで教えてくれるような未来を想像しています。今、普通にできていることが「なぜ昔あんなことしていたのだろう」と。テクノロジーが、そのように変わるきっかけになったらいいなと思っています。

学生

御社が取り組んでいる東京オリンピック事業、またeスポーツやAI事業について教えてください。

土岐

弊社は「ワールドワイドオリンピックパートナー」というスポンサーを担っています。事業としては、弊社の強みである半導体でもCPUの部分。そこをオリンピックにおいてどう活用できるかを考えながら進めています。テクノロジーの面では、3Dトラッキングを使い、例えば体操の選手が回った時に「何回転したか」「軸はどこにあるか」を画像で認識するようなシステムなど、最新の技術によって今まで以上にみなさんが観戦を楽しめるような環境を提供したいと考えています。同じく、半導体を活用することで実現できる「新しい体験」のひとつにあるのがeスポーツ。今までできなかったことを、ネットワーク上でいかに楽しんでいただけるか―半導体の新たな活用法として非常に期待している分野です。最後にAIの事業ですが、一番のポイントはデータ処理。今後は、膨大なデータ処理に加え、解析や分析など、より効率的に処理できるようになってくるでしょう。生活を豊かにする一 手段としてAIは重要な役割を担っていると思います。

学生

CPUをメインにした御社がeスポーツに取り組んだきっかけは何でしょうか?

土岐

パソコンやサーバ、電子デバイスをより楽しんでもらう使い方の“ひとつの表現”としてeスポーツがあると考えています。性能が高いほど、遠隔でもその場にいるような臨場感とスピードで戦える。これまでに想像もつかなかったようなことが、半導体の技術によって現実に近づいていますし、もしかするとリアル以上の体験もできるかもしれません。eスポーツで培ったテクノロジーは、それ以外にも派生して使えると思いますので、応用したさまざまなことが実現できるのではないでしょうか。すでに海外でeスポーツは人気ですが、最近日本でも耳にする機会が増え、そのたびにうれしい気持ちになりますね。

都心とそれ以外で受けられるテクノロジーの恩恵は一長一短

学生

災害が起きた場合、5Gはシステム面で迅速に対応ができるのではないかと思うのでいかがでしょうか。

土岐

それはいい考えですね。ドローンなどによってリアルタイムで撮影できれば、すぐに現場の状況が分かるので、できることも増える。リアルタイム性が速くなるのはいいことだと思います。たまたま今朝通勤中にTEDで「イカとタコの脳」に関する動画を観ていたのですが、人間の脳とは全く違う進化をしているのです。彼らの脳は体の器官全体に分散しているので、リアルタイム性が非常に早い。集中処理にも利点はありますが、分散処理のほうが効率いいこともある。災害もそうですよね。周辺を効率よくセンシングし、そこに対してサービスを届ける。それが5Gになればより早くできるし、今後さらに発展するかもしれません。

学生

その場合、都市と田舎での差が出てくるのではないでしょうか?

土岐

「メガシティ」という概念はご存知ですか?いずれ、生活エリアの75%が都市部に集中する。そのときに起こりうる問題を半導体などテクノロジーで解決しようというものです。一方、都市以外ではサービスレベルが落ちていいのかという課題についてはあまり議論されていませんでした。ただ技術の力によって、コミュニケーションなど体験する手段は、場所にはとらわれなくなるかもしれないと思っています。エリアによって普及するタイミングに若干の時差はあるかもしれませんが、全エリアをサポートできたとき、意外と都心は繋がりにくかったり、田舎のほうが快適だったりとか、一長一短があるかなと。過渡期には多少の不利益があるかもしれませんが、それは時間が解決すると思います。メガシティ思想なのか、分散しながら快適な環境を保つのか―環境さえ整えばいずれもさまざまなことが実現できるようになるので、最終的にどちらが正解なのかはわかりません。今、みなさんと対面でお話していますが、別の場所からホログラムなどで同じ感覚で会話できるなら、より時間は有効に使えますよね。それはそれで楽しみな世界です。

楽しいほど可能性は広がる仕事も勉強も楽しむことを忘れずに

学生

マネジメントにはどのような人材が求められていますか?

土岐

プロジェクトマネジメントは、非常に奥が深い任務だと感じています。というのも、予測できない部分への対応力をどう培うかが重要です。プランニングに時間をかけて100%の結果を持ってきても、時間が足りないことがある。一方、8割でも期限に合わせたほうがいいこともあるのが現状です。つまり、期日までに必要な要素をどう持ってくるかのバランス感覚が大切。ミクロ単位だけでなく、マクロで全体像を把握しながら、細部の重要ポイントを落とさないようにしていくのがプロジェクトマネージャーの仕事です。それは才能よりもむしろ鍛錬で身につく経験。その意味では、粘り強く、諦めない人が求められるかもしれません。あとは提案力。加えて、話していて楽しいと思われる人がいいかもしれません。コミュニケーションのハードルが低く、気軽に相談ができる人がプロジェクトマネージメントに向いている気がします。

学生

今、仕事をしていて幸せですか?

土岐

そうですね、幸せだと思います。自分に仕事がまわってくるのは期待されているからこそ。期待値が高くなるほどむずかしい仕事も量も増え、苦しいこともありますが、うまくバランスを取れるようになってきます。何よりも仕事を楽しめることです。勉強も楽しいと吸収しやすいですよね。仕事も同じで、辛いと思いながらしていてもペースは上がらず結果も出にくい。仕事の中でも楽しめる部分を発見できると効率が上がり学びも多いと思いますよ。

技術を理解しているみなさんだからこそ実現できるクリエイティブがある

学生

これから私たちの学校に期待することはありますか?

土岐

新しいクリエイティブな使い方や体験はぜひ若いみなさんに考えてほしい。単純に「できたらいいな」といった空想ではなく、みなさんはちゃんとベースの技術を理解した上で、発見・発明していけると思います。その点を意識しながら続けてください。「不可能」と却下されることもあると思いますが、新しい発想だけは忘れないように何回でも挑戦してほしい。アイデアを伸ばす力は、考え続けていくことにあります。学問をベースに、みなさんの個性としてクリエイティビティを伸ばしていただきたいと思いますね。

学生

これからAIやe-スポーツを目指す学生にエールをお願いします。

土岐

テレビやパソコンがない時代からすると、続々と誕生するデバイスによって生活や文化は大きく変わっていますよね。特にAIやeスポーツなど、まさにみなさんはテクノロジーによって「新しい体験を生み出す最先端」にいる方です。ぜひよりよい世界を作れるようがんばってください。