ゲームにとどまらず、多分野で活用されるUnity異業界が融合し、可能性を生むツールに

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
世界中のゲーム業界でトップシェアを誇るゲームエンジン「Unity」。現在はARやVRを始めとして多領域で活用されている。変化するニーズに応えるべく開発を重ねる同社。VR研究を通じ、世に発信する簗瀬洋平さんに今後の展望を伺いました。

特別講師

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
プロダクト・エヴァンジェリスト
簗瀬 洋平

2012年ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社入社。プロダクト・エヴァンジェリストとして、学術研究に励み、教育現場を主軸に活躍。「ワンダと巨像」「FolksSoul 失われた伝承」「魔人と失われた王国」などを手がける。

ゲームづくりから生まれ
世に普及した開発エンジン

学生

御社の社風や雰囲気を教えてください

簗瀬

弊社の社員にはUnityユーザーが多いため、開発者であると同時に“使う人”の立場から提案して、改良している点が特徴的ではないでしょうか。そのため、エンジニアの発言力を非常に尊重してくれます。また“みんなで会社を作っていく”雰囲気が強い。代表者の思想に従うのではなく、社員それぞれが提案したり話し合ったりする文化が強くあります。

学生

今はどのようなお仕事をされているんですか

簗瀬

私は大学時代に学んだVRの知見を生かし、1995年から約20年弱、ゲーム開発をしてきました。現在は、VRを研究している人たちとの仕事がメインです。研究発表などを通じてUnityを広める活動も同時に行っています。

学生

コロナが流行して、以前と比べて業務に変化はありますか?

簗瀬

弊社は世界中にたくさんオフィスがあるため、もともとZoom会議やチャットを始めとしたネットワーク文化が浸透していました。そのため、コロナが流行してからもあまり変わっていません。早い時期からテレワークとなり、そのまま1年半以上が経っている状況です。

学生

Unityが誕生したきっかけを教えてください

簗瀬

アップル社がiPhoneを発売し、iOSデバイスが広がってから、ゲームを作る人が増えました。つまり新しいゲームの市場ができた。弊社にも、ゲームを作って売ろうと考えた開発メンバーがいたのですが、そこでリリースするだけでなく“ゲームを作るために開発したシステム”を販売してみてはどうだろう、と考えたのが始まりです。まずは無料で多くの人に使っていただき、その中で利益を得た人からはお金をはらってもらうというビジネスに転換していきました。

ユーザーニーズを汲み取り必要な要素を開発して提供する

学生

Unityが使える人材の強みを教えてください

簗瀬

ひとつには、活躍の場がゲーム開発だけではないこと。自動車や建築、映像、医療など多業界でスキルを活かすことが可能です。実際に現在、ゲーム開発会社の仕事は多岐にわたっています。Unityはゲーム開発ツールとして普及しているだけでなく多くの産業でポテンシャルを引き上げていると思います。

学生

Unityの最新トレンドがあれば教えてください

簗瀬

新しいデバイスが登場したときにはすでに、ほとんどでUnityが使えるようになっています。一般的にUnityがハードに合わせていると思われるかもしれませんが、実は逆。ハードを作る人がUnityで開発できるよう対応してくれているのです。また、最近のトレンドは自動車やロボット関係でしょうか。例えばロボットを動かすためのOS「ROS(Robot Operating System)」に、Unityは対応していますし、機械学習にも使えます。このようにUnityを通じて他業界が混じり合い、その結果、別の業界の仕事をする人が増えているのが今のトレンドだと思います。

学生

想定外の使われ方によって、開発・提供したことはありますか?

簗瀬

unityはもともと3Dを開発するためのゲームエンジンでしたが、皆さん2Dの印象が強いのではないでしょうか。なぜかというと、当時のスマートフォンはそこまで3Dの描画能力がなく、2Dの需要が非常に多かったからです。これは弊社の開発の特徴ですが、私たちから明確な使い方を提案してリリースすることはさほどありません。むしろ、Unityユーザーが主体です。ユーザーが行っている業務のサポートとなるもの、またニーズに応えられる機能を考えて開発されています。弊社がユーザーを導いているわけではなく、どちらかというと、ユーザーがUnityをリードしてくれているのです。同時に、そのような背景から生まれた製品によって、一人でも多く、誰もが使える環境を拡げたいと考えています。

学生

VRを使った撮影や制作は一般化されると思いますか?

簗瀬

現在VRを使う際は、都度、ヘッドマウントディスプレイを装着したり外したりしていますが、いずれはVRの中だけで何でもできる世界になるのではないでしょうか。実際にアニメーションや映像制作するソフトウェアを開発して出している方もいますし、Unityも同じように進むのではないかと思っています。

コミュニケーションを取りながら丁寧に仕事できる人が評価される

学生

仕事をする際、大切にしていることは?

簗瀬

基本的に、仕事は“人との関係”、誰かと一緒にするものです。相手がどんな目的を持って何をしているのか。しっかり理解しながら、いい関係性が築けるように心がけています。またUnityは仕事のためのツールです。ユーザーはUnityを通じてモノづくりをしていますので、彼らの気持ちを考えることが大切。“理屈として正しい”だけではなく“どんな気持ちで取り組んでいるのか”――効率的に働くことも必要ですが、その際も人の気持ちを含めた上での効率化を考えなくてはいけません。

学生

活躍している社員の共通点は?

簗瀬

ゲーム業界で活躍している人は、破天荒で孤高なイメージがあるかもしれませんが、非常に丁寧にコミュニケーションが取れる人が多いです。何よりも周りを大切にしながら、きちんと仕事を果たす――その結果が成果として現れ、実績になっていると思います。発言も土台があってこそ。弊社には有名なクリエイターが入社してくることもありますが、毎回、彼らが社会人としてしっかりしていることに感心します。

学生

学生時代に勉強・経験しておくべきことは?

簗瀬

学生時代はずっと勉強できる環境です。社会に出ると新しいことを学ぶ時間はなかなかありません。集中して多くの時間を費やすことができれば、効率もよくなります。ただし、勉強はテキストを読むことだけではなく、新しいことにトライすること。必要なことを試したり、失敗したら何がいけなかったのかを考えてやり直したり……経験を含めて“勉強”してください。

学生

これから業界を目指す学生へエールをお願いします。

簗瀬

多くのことを学ぶのは“自分で何かを作るとき”です。「作り方がわからないから勉強する」のではなく、触って進めることで、やるべきことや知りたいことが明確になってくるはずです。まずは手を動かしてみてください。今は、インターネットを通じて人に見てもらうことができる時代です。「ちゃんとした作品を作らなくてはいけない」と気負わず、一部でも公開すれば、思わぬ出会いがあるかもしれませんので、積極的に発信してほしいですね。