
国内ゲーム400社以上のネットワークを支える
PCやスマートフォンなど多様なデバイスにおいて、快適なインターネット環境を助けるクラウドコンピューティング。その創始者「アマゾンウェブサービス(以下AWS)」は、2006年のサービス開始以降、分野を拡大しながら新たな取り組みに挑み続ける。教育分野のプログラムを担う澤さんに、製品の特徴や目指すところを教えていただきました。
特別講師

ソリューションアーキテクト
ゲーム会社にてMMORPGのインフラエンジニアを経験した後、組み込みソフトウェア会社のIoTプラットフォームアーキテクトを経て、現在はAWSのソリューションアーキテクトとして、ゲーム業界を担当。
プレイヤーに最高の感動を届ける“ゲームクラウド”

プレイヤーに最高の感動を届ける
“ゲームクラウド”
-
吉田
AWSは「Amazon Web Services」の略称でクラウドサービスを提供する会社です。アマゾンといえばショッピングサイトですが、そのスタートは本の通信販売でした。規模が大きくなるにつれシステムが複雑になり、それを作り変える過程で生まれたのが、今のAWSのクラウドサービスの基礎になっています。その後、自社であるアマゾンだけでなく、他のお客さまにもクラウドサービスを提供しようと設立されたのがAWSです。
-
学生
現在のお仕事について教えてください。
-
吉田
AWSのソリューションアーキテクトをしています。多くのゲーム会社様がAWSを使ってゲームを開発・運用するための技術サポートをしています。お客様には任天堂様やカプコン様など、国内の大手ゲーム会社から中小企業までのサポートを行っています。
-
学生
クラウドサービスとは、どのようなサービスですか。
-
吉田
インターネットのサービスを行うには、ネットワークを引き、サーバーという機械を購入し、オペレーティングシステム(OS)を設定して走り出すものですが、ゲームもそうしたシステムの上に成り立っています。こうしたサーバーがきちんと稼働するようにメンテナンスし、もしサーバーが壊れたら修理するわけですが、AWSは「データセンター」を用意し、インターネットを経由してサーバーの機能自体を提供します。つまりオンラインゲームを提供したいお客さまの手を煩わすことなく、快適な環境で作業を行っていただくサービスを提供しているのです。
目まぐるしく変化する業界で、
学び続ける姿勢が未来につながる

目まぐるしく変化する業界で、
学び続ける姿勢が未来につながる
-
学生
一番印象に残っている仕事を教えてください。
-
吉田
タイトルは明かせませんが、大人気ゲームのリリースでは、数千台のサーバーの負荷試験を担当しました。何しろ数万人のユーザーが一斉にアクセスしても耐えられるシステムでなければいけません。大規模で大変難しく、話し合いを重ねながらの作業でしたが、それだけやりがいもありました。チーム全員のモチベーションも高く、大変だけど楽しかったですね。そうしてかかわったゲームの「スタッフロール」に名前が載ると、やはり嬉しいものです。
-
学生
ゲームを作るとき、方針や方向性はどのように決めているのですか。
-
吉田
会社によってアプローチはさまざまですね。市場調査部門を持つ会社もありますが、どの会社もゲームプロデューサーがアンテナの感度を高くして、国内外問わず流行のゲーム、つまり大人気で売れているゲームを常にチェックし分析していますね。そこに自分のアイデアを重ねて、数名の小さい規模でプロジェクトを開始します。
-
学生
ゲーム開発者に必要な資格や知識はありますか。
-
吉田
これからは、UnityやUnreal Engineといったゲームエンジンの知識は押さえておいた方が良いでしょう。またオンラインゲームには、ネットワークやサーバー、それに関連する知識が必要不可欠なので、コンピュータサイエンスの入門あたりの知識がある方が有利です。その他は作りたいゲームに取り組むたびに、必要な知識を深めるといった勉強の仕方で良いと思います。幅広い知識を要求されるので大変でしょうが、手がけるゲームがどういう技術を使ってどう動いているのかといった、ゲームエンジンやサーバー、ネットワークなどの基礎があれば、将来きっと役立ちます。
正解がないからこそ、新しいことにどんどんチャレンジ

正解がないからこそ、
新しいことにどんどんチャレンジ
-
学生
今後ゲーム業界は、どのように成長するでしょうか。
-
吉田
まずマルチプレイゲームやオンラインゲームなど、ネットワークを前提としたゲームは今後も伸びます。今のトレンドはメタバースですね。オンライン上に構築された3DCGの仮想空間に参加者が大勢が集まって、コンサートを開いたりみんなで何か作業したりする「仮想空間の共有」が、今後さらに広がりをみせるでしょう。ゲームではVR技術を入れて、ますますリアルなマルチプレイゲームが可能になります。
-
学生
5Gなどさらに超高速通信の世界になると、ゲームストリーミングは主流になりますか?日本は任天堂やSEGAなどコンソールを主力にする企業も多いですよね。
-
吉田
どちらか、というのではなく、コンソールとストリーミングの両方とも成長すると思います。コンソールは世界でもまだまだ売り上げを伸ばしていますし、当面その勢いは衰えないでしょう。なぜなら一定のファン層がいますし、会社もコンソールに対する付加価値を付けていますからね。ただしスマートフォンやITが進んだ中国などの国は、ストリーミング用のゲームコンテンツが伸びる傾向にあります。国ごとの事情によって左右されますね。
-
学生
Amazon/AWSのゲームストリーミングやゲーム開発について教えてください。
-
吉田
何といってもクラウドをベースにしたゲーム配信サービス「Luna(ルナ)」です。これによって最新ゲームがどんなデバイスでもプレイできるようになりました。一番のメリットですね。またAmazonGamesが最近リリースしたのが「New World」です。リリース当日の同時接続数は、なんと50万人を突破しました。このNew Worldは、魔法が存在する島を舞台にプレイヤー同士が冒険したり戦ったりというゲームですが、その中で協調や敵対といったプレイヤー同士のドラマも楽しめますよ。みなさんもぜひ挑戦してみてください。
-
学生
ゲーム業界を目指す学生に求めることや期待することはありますか。
-
吉田
くじけない精神を持ちましょう!ゲーム開発はトライ&エラーの繰り返しです。ゲームに正解はありません。大事なのは却下されても落ち込まず、うまくいかなかった理由を分析して、得た学びを次に生かすことです。このサイクルをいかに早く、数多く回すかで大きな差がつきます。だから、新しいことに積極的にチャレンジできる人は強いですね。ちなみに米国は効率第一で、あらゆる場面で自動化が進んでいます。例えば、1回テストしている間に100回テストできるような環境を備えている会社もあります。つまり100回修正することも可能なわけです。当然差が開くわけで、効率化は今後日本で重要なテーマになるでしょう。あと、今は開発がグローバルに展開され、国籍などが関係なくなる時代ですから、語学をしっかり習得しましょう。
国内のゲーム業界は、慢性的な人手不足です。しっかり学んだみなさんは、とても期待されている優秀な人材なんですよ。みなさん、ぜひゲーム業界に貢献するためにがんばってください。